日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG24] アルマによる惑星科学の新展開

2019年5月29日(水) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:武藤 恭之(工学院大学 教育推進機構)、百瀬 宗武(茨城大学理学部)、佐川 英夫(京都産業大学理学部)、下条 圭美(国立天文台)

[PCG24-P04] ALMA高空間分解観測で探るTタウリ型星RY Tauに付随する円盤の詳細構造

*小西 美穂子1,2橋本 淳1,2Hauyu Liu3Ruobing Dong4武藤 恭之5 (1.自然科学研究機構 アストロバイオロジーセンター、2.国立天文台、3.中央研究院天文及天文物理研究所、4.ビクトリア大学、5.工学院大学)

キーワード:原始惑星系円盤、円盤構造、ダスト連続波

RY Tauは、質量が約2太陽質量・年齢が800万年程度の古典的Tタウリ型星である(e.g., Calvet et al. 2004)。赤外超過から原始惑星系円盤を持つことが知られており(e.g., Furlan et al. 2009)、またジェット構造が検出されている活発な天体である(e.g., St-Onge & Bastien 2008)。過去にCombined Array for Research in Millimeter-wave Astronomy (CARMA) 望遠鏡によってミリメートルサイズのダスト連続波で半径約0.1秒の穴構造が分解された(Isella et al. 2010)が、すばる望遠鏡を用いた近赤外線観測では0.4秒角以遠のダスト散乱光成分には円盤構造が検出されなかった(Takami et al. 2013)。我々がALMA望遠鏡のアーカイブデータのビジビリティを調べたところ、さらに詳細な円盤構造を持つ可能性があることがわかった。そのため、RY Tauに付随する円盤の高空間分解の観測を行った。
観測はプロジェクト2017.1.01460.S(PI: 橋本淳)のもとで2017年10月に行われた。観測帯域はBand 6(~230 GHz, ~1.3 mm)、総積分時間は5.14分である。ダスト連続波とともに3つの一酸化炭素同位体(12CO, 13CO, C18O)も観測した。ALMAから提供されたコードでキャリブレーションを行い、CLEANアルゴリズムで像再生をおこなったところ、ビームサイズが0.087秒×0.036秒(方位角30.7度)の画像を得ることができた。結果、円盤のダスト放射光(傾斜角65.9度、方位角22.4度)をとらえることができ、既知の半径0.1秒程度の穴構造があることを確認した。さらに、半径0.35秒角程度のところに溝構造があること、内側のリング円盤に明るさの非対称が見られることを発見した。この溝構造の詳細な性質を調べるために、方位角方向に平均したビジビリティプロファイルを用いて、最適な円盤モデル(1つの穴構造と1つの溝構造をもつ)の推定を行った。マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いて最適解を求めたところ、この溝構造は細くて深いこと(幅が1.2天文単位、深さは周囲の明るさの0.41倍)がわかった。RY Tauに付随する円盤は大きな傾斜角(約66度)をもつにもかかわらず、細くて深い溝構造が分解されている。これは、円盤のスケールハイトが小さいこと(約0.27天文単位以下)を示唆している。この系では、乱流が小さいなどのメカニズムによってダストが沈殿しているのかもしれない。
なお、RY Tauの距離はGaiaのデータリリース1(178パーセク)と2(440パーセク)で大きく異なっている。本観測および過去のALMA観測で検出された12COガスの速度分布から、178パーセクの可能性が高いことを導いた。本予稿では178パーセクを用いて距離の換算を行っている。