日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM19] 太陽物理学の最前線

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:今田 晋亮(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、横山 央明(東京大学大学院理学系研究科)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、勝川 行雄(自然科学研究機構国立天文台)

[PEM19-P01] サイクル24最大の太陽フレア発生過程

★招待講演

*伴場 由美1,2井上 諭1今田 晋亮1草野 完也1 (1.名古屋大学宇宙地球環境研究所、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)

キーワード:太陽フレア、ひので衛星、SDO衛星、フレアトリガ、太陽磁場、太陽黒点

2017年9月に太陽表面に現れた太陽活動域(AR)NOAA12673は、その急速な成長に伴い、4つのXクラスフレアを含む多くのフレアを生じた。特に、9月6日のX9.3フレアは、今太陽活動サイクル24最大のフレアで、磁気嵐・電離圏擾乱による電波通信途絶やGPS測位誤差を引き起こしたことから、宇宙天気的にも注目されたイベントであった。そこで我々は、このX9.3フレア、およびその直前 (約3時間前) に発生したX2.2フレアの2つのXクラスフレアの発生に至る物理過程を理解することを目的として、ひので衛星およびSolar Dynamics Observatory (SDO) 衛星のデータ解析を行った。また、観測データより得られた結果を、観測されたベクトル磁場データから外挿された非線形フォースフリー磁場 (nonlinear force-free field : NLFFF) と比較し、X2.2フレアからX9.3フレアへと至る磁気フラックスロープの噴出過程を考察した。

観測データ解析より、AR東側に浮上し、同西側の正極領域に急速に貫入する負極の磁場構造が、2つの連続するXクラスフレアを引き起こすうえで重要な構造であることを見出した。これらの正極・負極間の磁気中性線上には、シアした磁気アーケードが存在しており、シアした磁気アーケード同士が負極の貫入運動により押し付けられ、磁気リコネクションしたことで、連続するXクラスフレアが発生した可能性がある。ひので衛星は、最初のX2.2フレア発生の約2時間前に、負極の貫入運動に伴うコロナ中での下降流 (100 km/s 程度) を観測しており、これは前述のアーケード磁場同士のリコネクションに伴うプラズマの運動を捉えたものと考えられる。また、外挿されたNLFFFが、磁気中性線に沿った小さなフラックスロープを持つと共に、その磁場を初期条件とした電磁流体力学(MHD)シミュレーションではこれらのフラックスロープが噴出することが見出された。それゆえ、前述の負極の貫入運動がフラックスロープを駆動し、X2.2フレアの発生の原因となったことが可能性の一つとして考えられる。また、シミュレーションでは、X2.2フレアに伴う噴出によるフラックスロープ間の磁気リコネクションによって、より大きく、より捻れたフラックスロープが形成された。この新たに形成されたフラックスロープの噴出により、X9.3フレアが発生したと考えられる。負極の貫入運動は、X2.2フレア発生前からX9.3フレア発生後まで連続的に観測されており、シミュレーション結果と併せて、連続する2つのXクラスフレアのいずれの発生に対しても重要な役割を担ったと解釈できる。