日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM19] 太陽物理学の最前線

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:今田 晋亮(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、横山 央明(東京大学大学院理学系研究科)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、勝川 行雄(自然科学研究機構国立天文台)

[PEM19-P04] マイクロ波スペクトルの折れ曲り周波数と白色光放射温度の統計解析による白色光フレア発生条件の探索

*鶴田 康介1渡邉 恭子1増田 智2Säm Krucker3 (1.防衛大学校、2.名古屋大学宇宙地球環境研究所、3.University of Applied Sciences Northwestern Switzerland, UC Berkeley)

キーワード:太陽フレア、電波

特に大規模フレアに伴って可視連続光の増光が発生する「白色光フレア」の起源は、これまでの観測・研究により、フレアで加速された非熱的電子であると考えられている。高エネルギーの電子が発生していることや、フレアのエミッションメジャーと温度の関係(Watanabe et al., 2017)などから、白色光フレアでは加速域の磁場が強いと考えられる。フレアループトップの上部にあると考えられている加速域の磁場は測定されていないが、マイクロ波スペクトルの折れ曲がり周波数を用いることによって、その磁場強度を推定することができる(Dulk 1985)。先行研究(北川潤2015年、修士論文)では、野辺山強度偏波計(NoRP)のスペクトルより、白色光フレア(WLF)の折れ曲がり周波数が、非白色光フレア(NWL)のそれと比べて値が大きいことから、白色光フレアにおける強磁場の存在が示唆されていた。

そこで我々は、2010年1月から2017年12月の間に発生したM3クラス以上のフレアにおいて、NoRPで観測されたマイクロ波スペクトルの折れ曲がり周波数の統計解析を実施した。上記期間に白色光データ(Hinode/可視光磁場望遠鏡(SOT), SDO/HMI)とNoRP のデータが同時に得られていたイベント(51例)の中から、野辺山電波ヘリオグラフ(NoRH)のイメージによりマイクロ波放射がループトップに存在していたイベント(29例、うちWLF:17例、NWL:12例)のみを取り出し、白色光の有無による折れ曲り周波数の違いが見られないかについて調べた。その結果、折れ曲がり周波数はWLFで4例、NWL で3例のみ17GHzよりも高くなっており、WLFとNWLで折れ曲がり周波数の違いは見られなかった。折れ曲り周波数は磁場強度だけでなくフレアの電子密度にも比例するため(Dulk 1985)、折れ曲がり周波数を用いて加速域の磁場強度を考察するには、電子密度の影響も考慮しなければならないと考えられる。

一方、先行研究(Watanabe et al., 2017)のなかでWLFとNWLで明確な違いが見られたのはフレアの立ち上がり時間(∝フレアの激しさ:Impulsivity)であり、WLFはNWLと比べて立ち上がり時間が短い(WLFはインパルシブフレアに伴っている)ことが報告されている。しかし、立ち上がり時間が短いにもかかわらず、白色光放射の増光が見られないイベントも見られた。そこで、この立ち上がり時間(Impulsivity)の違いが白色光放射自体に与えている影響を調べるため、Hinode/SOTの3色(赤・緑・青)データを用いて、上記期間中に白色光の増光が確認された約40例について白色光放射の温度を導出した。今回は、Impulsivityと放射温度の関係について議論する。