日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS05] Recent advances of Venus science

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:佐藤 毅彦(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究本部)、堀之内 武(北海道大学地球環境科学研究院)、山本 勝(九州大学応用力学研究所)、Kevin McGouldrick(University of Colorado Boulder)

[PPS05-P10] 電波掩蔽による金星大気温度データからの重力波の波束の抽出

*森 亮太1今村 剛1Javier Peralta2 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構)

キーワード:あかつき、大気重力波、電波掩蔽観測

金星探査機「あかつき」の電波掩蔽観測により2016年から現在に至るまで大気温度の高度分布が得られている。電波掩蔽観測は、探査機から送信される電波が惑星大気を通過して屈折したのち地球の受信局に届く機会を利用して、大気の屈折率の変化を地上での受信周波数の変化として捉える手法であり、屈折率の高度分布から気圧や気温を導出することが出来る。こうして得られる気温分布には様々な大気擾乱に起因する変動が観測される。ここでは、大気大循環の駆動において重要な役割を持つと考えられる大気重力波に注目する。

重力波は大気中の浮力を復元力とする小規模な波動である。重力波は運動量を鉛直方向に運ぶ働きがあり、散逸に際して背景大気に運動量を受け渡すことにより、平均風の加減速をもたらす。金星においては高速帯状風の全球的な構造に影響を与えていることが予想されている。しかし、重力波は空間スケールが小さく、周期が比較的短いという性質があるために、その空間構造を観測で捉えることが難しい。これまでに、重力波に伴うと考えられる短鉛直波長の温度擾乱の振幅の緯度-高度分布などが調べられてきたが、卓越する波長や高度方向の拡がりについては分かっていなかった。

そこで、本研究では、ウェーブレット解析を鉛直温度分布に適用し、空間的に局在した温度擾乱を抽出する。今までは、温度データにフーリエ変換を適用した研究はあるが、フーリエ変換は無限に続く波を仮定としており、空間的に局在した波束の特徴を取り出すのには適切ではない。ウェーブレット解析はそのような有限区間の波に関して周期や振幅を得たい時に有効である。本発表では電波ホログラフィという方法で従来より高い高度分解能で得られた温度データに対してウェーブレット解析を適用した結果を報告する。また、得られた結果から、大気重力波の波束の長さや高度分布などに関係も報告する。