日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系物質進化

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:癸生川 陽子(横浜国立大学 大学院工学研究院)、藤谷 渉(茨城大学 理学部)、小澤 信(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、松本 恵(東北大学大学院)

[PPS07-P05] NWA8613隕石中のヒボナイトとメリライトに富む細粒難揮発性包有物の酸素同位体分布とAl-Mg年代

*和田 壮平1川崎 教行1圦本 尚義1,2 (1.北海道大学、2.宇宙科学研究所)

隕石に含まれるCa–Al-rich inclusions (CAIs) は,太陽組成高温ガスからの凝縮鉱物により構成される岩石である [1].CAIsは,岩石学的に粗粒CAIsと細粒CAIsに分けられる.その中でも,細粒CAIsは,希土類元素パターンと鉱物の複雑な層構造から,溶融を経験していない凝縮物であると考えられている [2, 3].粗粒Type B CAIsのように溶融を経験したCAIsについては,これまでに詳細に形成過程研究,酸素同位体組成の非平衡分布の起源解明や,形成年代測定がなされてきた [4, 5].一方,細粒CAIsについて,それらを系統的に行った研究はこれまでにほとんどない.本研究では,NWA8613 CVコンドライト中の細粒CAIについて,形成過程と周囲のガスの酸素同位体変化,および形成年代を明らかにすることを目的とし,系統的な岩石学的研究・局所酸素同位体分析・26Al–26Mg年代測定を行った.試料の観察と元素分析には,走査電子顕微鏡システムFE-SEM-EDS-EBSD (JEOL JSM-7000F; Oxford X-MaxN 150; Oxford HKL) を用いた.局所酸素・Al–Mg同位体分析は,二次イオン質量分析計 (SIMS, Cameca ims-1270e7, 1280HR) で行った.

本細粒CAIは,10 × 12 mmのサイズで,不規則な外形をもつ.本CAIは主に,メリライト,ヒボナイト,スピネルから構成され,これらの鉱物がCAI全体で存在比を変えながら分布する.鉱物の組み合わせ自体は,粗粒Type A CAIによく似ているが,よりヒボナイトに富むことが特徴である.構成鉱物の酸素同位体組成は,CCAM (Carbonaceous Chondrite Anhydrous Mineral) ライン上にプロットされる非平衡分布を示し,Δ17O ~ −23から0 ‰の間に分布している.本CAIは岩石学的にヒボナイトに富むコア部,スピネルに富むコア部,メリライトに富む内部マントル部,ヒボナイトとスピネルに富む外部マントル部に分けられる.さらに包有物の周囲は,薄いスピネルとディオプサイドの層状リムに囲まれている.メリライト結晶は,コア・マントル部それぞれに含まれている.コア部のメリライト結晶は結晶内部がゲーレナイト成分に富み,結晶粒界部分がオケルマナイト成分に富む正累帯構造をもち,Δ17O ~ −23から−10‰の間の酸素同位体組成変化を示す.メリライトの酸素同位体組成と化学組成の変化には相関がみられ,オケルマナイト成分値 (Åk値) が上昇するにつれてΔ17O値が上昇する傾向を示す.内部マントル部に見られるメリライト結晶は,結晶の中心部分から粒界に向かって,まず,逆累帯構造の結晶成長を示し,その周りで正累帯構造に転じ,さらに再び結晶リム部にかけて逆累帯構造へと変化する.一方,その酸素同位体組成は,このような複雑な化学組成変化 (Åk2–14) にかかわらず,均一な値を示す (Δ17O ~ 0 ‰).外部マントル部のメリライト結晶は,正累帯構造をもつ.酸素同位体組成は,Δ17O ~ −17から0 ‰の間の変化を示し,Åk値が上昇するにつれてΔ17O値が上昇する傾向を示す.ヒボナイトとスピネルは,その産状・組織にかかわらず均一な酸素同位体組成を示した (Δ17O = −23 ‰).コア部と外部マントル部に含まれるヒボナイトと内部マントル部に含まれるメリライトのAl–Mg同位体組成はアイソクロン図上で全て一つの直線上にプロットされた.このAl–Mg鉱物アイソクロンが与える初生26Al/27Al比は (4.50 ± 0.09) × 10-5である.

本CAIと同じバルク化学組成をもつメルトからは,ヒボナイトが晶出しないことが実験的に示されているが [6],本CAI中では,ヒボナイトが存在比を変えながら全域に分布している.また,内部マントルのメリライト結晶の化学組成が振動する累帯構造をメリライトのメルト晶出により説明ことは難しい.これらの岩石学的組織は,メリライトが星雲ガスから凝縮しながら,先に形成していたヒボナイトとスピネルを取り込みつつCAIが成長したことを示している.鉱物間の酸素同位体非平衡分布は,その凝縮時に,周囲のガスの酸素同位体組成Δ17O が~ −23から0 ‰の範囲で変動していたことを示し,さらにその変動方向は,少なくとも,16Oに富む組成から乏しい組成に変化し,再び16Oに富む組成へと変化していたことを示す.また本CAIの初生26Al/27Al比は,この一連の形成過程が,太陽系最初の固体形成 [7] から16 ± 2万年後に起きていたことを示唆する.本研究は,太陽系の形成最初期のおよそ20万年の間,異なる酸素同位体組成をもつガスリザーバが存在していたこと [8] を支持する.

References: [1] Grossman (1972) GCA 36, 597–619. [2] Boynton (1975) GCA 39, 569–584. [3] Krot et al. (2010) MaPS 39, 1517−1553. [4] Kawasaki et al. (2018) GCA 221, 318–341. [5] Yurimoto et al. (1998) Science 282, 1874–1877. [6] Beckett and Stolper (1994) MaPS 29, 41–65. [7] Larsen et al. (2011) ApJL 735 L37–L43. [8] Kawasaki et al. (2017) GCA 201, 83−102.