[PPS08-P01] 月の表面地形から推定する縦孔下の溶岩チューブ洞窟の空洞高さ
キーワード:月、縦孔、溶岩チューブ
[はじめに] 米国のLROのデータによって作られた月面図LROC Quick Map(1)から縦孔近傍表面およびリルの傾斜率(sinα)を読み取り、その下にあると想定される溶岩チューブ洞窟の空洞高さを推定した。春山らの発見したMarius Hills Hole(MHH), Mare Tranquillitatis Hole(MTH), Mare Ingenii Hole(MIH)(2~5),さらにLacus Mortisの縦孔(6,7),Chandrayaan-1発見のリル構造(8),およびSinus Iridum Pit(9)ついても検討した。溶岩の流れの方向が不明なものは周りの傾斜角度が最も高い角度を示す方向を用いた。空洞高さはチューブ内の溶岩(ビンガム流体)流動限界条件H=nfb/(ρgsinα) より求めた(10~12),ここでn=4でHは円形断面チューブ高さ、n=3でHは有限幅矩形断面チューブ高さ、n=2でHは無限幅矩形断面チューブ高さを示す。ここで、重力加速度g=1.62m/sec2, 溶岩密度ρ=2500kg/m3とし、降伏値はfb=100Pa および200Paを用いた(13)。[Marius Hills Hole(MHH)] MHHは直径57mx48m,深さ48m,天井厚さ31m,空洞高さ17mである。 MHHの存在する近傍のリル表面の傾斜角度を0.28度から0.69度の範囲にあると考え、溶岩降伏値100Pa~200Paでチューブ高さを求めた。有限幅矩形断面チューブに対して100Paでは高さ15.4mとなり、MHHの空洞高さ17mに近い値を示している。[Mare Tranquillitatis Hole(MTH)] MTHは直径99mx84m,深さ107m,天井厚さ47m,空洞高さ60mである。 MTH近傍の傾斜角度で最も高い方向の傾斜角度0.62度を用いた。有限幅矩形断面チューブ高さは100Pa~200Paで6.7m~13.5mとなり、空洞高さ60mと比べて小さい。チューブの傾斜角度はもっと低い可能性がある。[Mare Ingenii Hole(MIH)] MIHは直径103mx66m,深さ37~63mである。MIH周りの方向で最も高い傾斜角度0.21度を使う。有限幅矩形断面チューブ高さは100Pa~200Paで20m~40mとなり、縦孔深さ37~63mであるので天井厚さは20m程度とみられる。[Lacus Mortisの縦孔] Lacus Mortisの縦孔は直径60mx100m,深さ114mである。縦孔周りの方向で最も高い傾斜角度は1.2度である。有限幅矩形断面チューブ高さは100Pa~200Paで3.7m~7.4mとなり、縦孔深さ114mであるので天井厚さはかなり厚いとみられる。[Chandrayaan-1発見のリル] リル中央部の未崩落部分の傾斜角度は0.93度である。有限幅矩形断面チューブ高さは100Pa~200Paで4.6m~9.2mとなる。未崩落部分の両端のリル深さは8m~17mであることを考えるとリルの未崩壊天井の下に空洞が存在するとすれば天井厚さは極めて薄いとみられる。[Sinus Iridum Pit] Sinus Iridum Pitは直径70mx30m,深さ20mである。Sinus Iridum Pit周りの方向で最大の傾斜角度は0.83度である。有限幅矩形断面チューブ高さは100Pa~200Paで5.1m~10.2mとなる。天井厚さは10m~15m程度であろう。
[おわりに]溶岩チューブ洞窟の空洞高さの推定値のまとめを表1に示す。溶岩チューブ洞窟があるとしてその空洞高さをLROC Quick Mapから表面の傾斜率を求めて推定した。溶岩チューブ洞窟存在策定の目安になると考えられる。ただし、チューブ形成後の地殻変動などにより、表面下の実際の溶岩チューブの傾斜率と異なる可能性はある。推定された空洞高さはあくまでも目安でありさらなる詳細な検討と探査による実証が期待される。
参考文献:(1)LROC Quick Map:https://quickmap.lroc.asu.edu/.(2)Haruyama J, et al., (2009):Geophys.Res.Lett.36,L21206.(3)Haruyama J, et al.,(2010):41st LPS Conf. 1285.(4)Haruyama,J.et al,(2012):Moon,Chap6,pp139-163,Springer.(5)Robinson MS, et al.,(2012):Planet.Space Sci.69,18–27.(6)Wagner RV, Robinson MS,(2014):Icarus 237,52-60.(7)Ik-Seon Hong,et al.,(2015):J.Astron.Space Sci.32(2),113-120.(8)A.S.Arya,et al(2010):41st LPS Conf.,1484.(9) R.V.Wagner et al.,(2015):2nd International Planetary Caves Conf.,9021.pdf.(10)本多力(2015):第59回宇宙科学技術連合講演会,3D02.(11)本多力(2017):第61回宇宙科学技術連合講演会,1B11.(12)本多力(2018):第62回宇宙科学技術連合講演会,3D02.(13)Moore,H.J.et al.,(1975):Proc.6thLunar Science Conf.,p101-118.
[おわりに]溶岩チューブ洞窟の空洞高さの推定値のまとめを表1に示す。溶岩チューブ洞窟があるとしてその空洞高さをLROC Quick Mapから表面の傾斜率を求めて推定した。溶岩チューブ洞窟存在策定の目安になると考えられる。ただし、チューブ形成後の地殻変動などにより、表面下の実際の溶岩チューブの傾斜率と異なる可能性はある。推定された空洞高さはあくまでも目安でありさらなる詳細な検討と探査による実証が期待される。
参考文献:(1)LROC Quick Map:https://quickmap.lroc.asu.edu/.(2)Haruyama J, et al., (2009):Geophys.Res.Lett.36,L21206.(3)Haruyama J, et al.,(2010):41st LPS Conf. 1285.(4)Haruyama,J.et al,(2012):Moon,Chap6,pp139-163,Springer.(5)Robinson MS, et al.,(2012):Planet.Space Sci.69,18–27.(6)Wagner RV, Robinson MS,(2014):Icarus 237,52-60.(7)Ik-Seon Hong,et al.,(2015):J.Astron.Space Sci.32(2),113-120.(8)A.S.Arya,et al(2010):41st LPS Conf.,1484.(9) R.V.Wagner et al.,(2015):2nd International Planetary Caves Conf.,9021.pdf.(10)本多力(2015):第59回宇宙科学技術連合講演会,3D02.(11)本多力(2017):第61回宇宙科学技術連合講演会,1B11.(12)本多力(2018):第62回宇宙科学技術連合講演会,3D02.(13)Moore,H.J.et al.,(1975):Proc.6thLunar Science Conf.,p101-118.