[SCG52-P06] 愛媛県高縄半島に分布する領家花崗岩類の岩石記載とジルコンU-Pb年代
キーワード:領家帯、花崗岩類、高縄半島
1.はじめに
愛媛県北部に位置する高縄半島には、多様な岩相・岩質からなる領家帯花崗岩類が分布しており、宮久・平岡(1970)、越智(1982)などにより岩石記載や岩相区分がなされてきた。越智(1982)は、本地域の花崗岩類をトーナル岩質岩の3岩体、花崗閃緑岩の4岩体、花崗岩の7岩体に区分し、貫入形態から示唆される前後関係から、トーナル岩質岩、花崗閃緑岩、花崗岩の順に形成したことを指摘した。しかしKagami et al. (1988)は、これらの岩体が93.1±2.9 MaのRb-Sr全岩アイソクロンを形成することから、白亜紀後期のほぼ同時期に形成された可能性を示した。一方、吉倉ほか(2004)は当地域の花崗岩類を13の岩型に区分した上で、第1期(片麻状トーナル岩~花崗閃緑岩)、第2期(塊状花崗閃緑岩)、第3期(塊状アダメロ岩~花崗岩)に大別し、第1期および第2期の花崗岩類に第3期の花崗岩類が貫入しているとした。しかしながら、それらのジルコン(単粒子)U-Pb年代は、第3期の花崗岩類(96.7±0.7 Ma)が第1期および第2期の花崗岩類(それぞれ91.4±0.2 Maと91.0±0.2 Ma)より有意に古い年代を示し、時階区分と矛盾することを報告している。このように、高縄半島に分布する領家花崗岩類については、その形成年代や岩相区分、貫入関係等について見解が収束しておらず、さらに十分な検討がなされる必要がある。そこで本研究では、当地域の領家花崗岩類について岩石記載をおこなうとともに、新たにジルコンU-Pb年代測定を行い形成年代の検討を行なった。
2.岩石記載
本研究では、越智(1982)の岩体区分に基づき、岩石試料採集と薄片観察を行った。モード測定による鉱物構成量比から、越智(1982)のトーナル岩質岩はトーナル岩〜花崗閃緑岩、花崗閃緑岩はトーナル岩〜花崗閃緑岩、花崗岩は多くが花崗岩の組成をそれぞれ持つことが確認された。また、トーナル岩質岩から花崗閃緑岩、花崗岩への組成変化につれて、色指数が低くなる傾向が認められた。
3.ジルコンU-Pb年代
越智(1982)の区分に基づき、トーナル岩質岩(高縄岩体)、花崗閃緑岩(北条岩体)、花崗岩(糸山岩体)の試料からジルコンを分離した。これらの岩相は、片麻状トーナル岩、塊状花崗閃緑岩、塊状花崗岩であり、それぞれ吉倉ほか(2004)の第1期、第2期、第3期に相当するものと考えられる。ジルコンのカソードルミネッセンス像観察から、明瞭な波動累帯構造を示すリム部を選び、国立科学博物館設置のLA-ICP-MS によりU-Pb年代測定を行った。その結果、トーナル岩質岩について約94 Ma、花崗閃緑岩について約89 Ma、花崗岩について 約94 Maの年代を得た。
4.議論
本研究のモード測定による岩石分類は、越智(1982)と概ね一致する。一方、越智(1982)で貫入形態から指摘されたトーナル岩質岩、花崗閃緑岩、花崗岩の活動順に対し、本研究のジルコンU-Pb年代は、花崗閃緑岩がトーナル岩質岩および花崗岩より有意に若い。また、吉倉ほか(2004)の第1期、第2期、第3期のジルコン(単粒子)U-Pb年代と比べても、それぞれ本研究で得られた年代はやや異なる。当地域における白亜紀後期花崗岩質マグマ活動の詳細を明らかにするためにはさらなる年代データの蓄積が必要であるが、本研究結果からは、約94 Maのトーナル岩質岩および花崗岩の形成と、それに引き続く約89 Maの花崗閃緑岩の形成といった複数のマグマ活動が示唆される。
愛媛県北部に位置する高縄半島には、多様な岩相・岩質からなる領家帯花崗岩類が分布しており、宮久・平岡(1970)、越智(1982)などにより岩石記載や岩相区分がなされてきた。越智(1982)は、本地域の花崗岩類をトーナル岩質岩の3岩体、花崗閃緑岩の4岩体、花崗岩の7岩体に区分し、貫入形態から示唆される前後関係から、トーナル岩質岩、花崗閃緑岩、花崗岩の順に形成したことを指摘した。しかしKagami et al. (1988)は、これらの岩体が93.1±2.9 MaのRb-Sr全岩アイソクロンを形成することから、白亜紀後期のほぼ同時期に形成された可能性を示した。一方、吉倉ほか(2004)は当地域の花崗岩類を13の岩型に区分した上で、第1期(片麻状トーナル岩~花崗閃緑岩)、第2期(塊状花崗閃緑岩)、第3期(塊状アダメロ岩~花崗岩)に大別し、第1期および第2期の花崗岩類に第3期の花崗岩類が貫入しているとした。しかしながら、それらのジルコン(単粒子)U-Pb年代は、第3期の花崗岩類(96.7±0.7 Ma)が第1期および第2期の花崗岩類(それぞれ91.4±0.2 Maと91.0±0.2 Ma)より有意に古い年代を示し、時階区分と矛盾することを報告している。このように、高縄半島に分布する領家花崗岩類については、その形成年代や岩相区分、貫入関係等について見解が収束しておらず、さらに十分な検討がなされる必要がある。そこで本研究では、当地域の領家花崗岩類について岩石記載をおこなうとともに、新たにジルコンU-Pb年代測定を行い形成年代の検討を行なった。
2.岩石記載
本研究では、越智(1982)の岩体区分に基づき、岩石試料採集と薄片観察を行った。モード測定による鉱物構成量比から、越智(1982)のトーナル岩質岩はトーナル岩〜花崗閃緑岩、花崗閃緑岩はトーナル岩〜花崗閃緑岩、花崗岩は多くが花崗岩の組成をそれぞれ持つことが確認された。また、トーナル岩質岩から花崗閃緑岩、花崗岩への組成変化につれて、色指数が低くなる傾向が認められた。
3.ジルコンU-Pb年代
越智(1982)の区分に基づき、トーナル岩質岩(高縄岩体)、花崗閃緑岩(北条岩体)、花崗岩(糸山岩体)の試料からジルコンを分離した。これらの岩相は、片麻状トーナル岩、塊状花崗閃緑岩、塊状花崗岩であり、それぞれ吉倉ほか(2004)の第1期、第2期、第3期に相当するものと考えられる。ジルコンのカソードルミネッセンス像観察から、明瞭な波動累帯構造を示すリム部を選び、国立科学博物館設置のLA-ICP-MS によりU-Pb年代測定を行った。その結果、トーナル岩質岩について約94 Ma、花崗閃緑岩について約89 Ma、花崗岩について 約94 Maの年代を得た。
4.議論
本研究のモード測定による岩石分類は、越智(1982)と概ね一致する。一方、越智(1982)で貫入形態から指摘されたトーナル岩質岩、花崗閃緑岩、花崗岩の活動順に対し、本研究のジルコンU-Pb年代は、花崗閃緑岩がトーナル岩質岩および花崗岩より有意に若い。また、吉倉ほか(2004)の第1期、第2期、第3期のジルコン(単粒子)U-Pb年代と比べても、それぞれ本研究で得られた年代はやや異なる。当地域における白亜紀後期花崗岩質マグマ活動の詳細を明らかにするためにはさらなる年代データの蓄積が必要であるが、本研究結果からは、約94 Maのトーナル岩質岩および花崗岩の形成と、それに引き続く約89 Maの花崗閃緑岩の形成といった複数のマグマ活動が示唆される。