[SCG54-P07] 三波川変成帯四国地域の石英の微細構造とmisorientation解析
キーワード:石英、転位クリープ、EBSD、亜粒回転、三波川変成帯、ミスオリエンテーション解析
三波川変成帯汗見川ルートの石英粒子は、変成度に関係なく亜結晶粒回転とひずみ駆動の粒界移動の微細構造を示すことが明らかにされている(上田・清水、2018 JpGU)。本研究では、先行研究で得られた電子線後方散乱回折(EBSD)マップを用いて、片岩中の亜結晶粒回転プロセスを調べるために石英の結晶内misorientationを精査した。
全データから単一粒子内の境界を抽出するために、マッピングステップサイズの約9倍より大きく、互いに接触していない粒子のデータセットを作成した。粒子は、ドフィーネ双晶境界を除いた12°以上の境界を粒界として粒認識した。粒子の抽出は、データセットの合計が石英領域の>~80%をカバーし、データセット内に石英粒子が重複しないように各薄片について複数回行った。ドフィーネ双晶型のmisindexed粒子に起因する境界を除去するために、ドフィーネ双晶境界を除外せずに粒認識した際に生じるマッピングステップサイズの5倍以下の粒子をデータセットから除外した。
変成度に関わらず以下の特徴が示された。Misorientation角度分布は低角度(<10°)と60°に二つのピークを示す。 30~40°のmisorientationを有する境界はほとんど存在せず、65°を超えるmisorientationを有する境界は存在しない。misorientationの頻度は、低角から約30°まで徐々に減少し、約45°から60°まで徐々に増加し、60°を超えると急速に減少する。結晶座標系において、<~12°のmisorientation回転軸の分布はc軸付近に弱い集中を示し、m面に対しての極付近に集中を示さない。一方、大部分の試料は面構造に垂直に近い方向にc軸の集中を示す。低角回転軸がc軸付近に集中することと比較して、約15-40°の回転軸分布は、c軸方向から外れた集中を示す傾向がある。45~65°の回転軸分布はc軸方向に強い集中を示す。c軸が面構造に垂直な粒子はc軸が面構造並行で線構造に垂直な粒子よりも低角境界回転軸のc軸方向への集中が弱い傾向にあるが、結晶座標系における回転軸分布の全般的な特徴は変わらない。試料座標系において、石英粒子の短軸が面構造に対してほぼ垂直である試料に関しては、<~12°の回転軸分布は面構造平行で線構造垂直な方向に弱い集中を示す。石英粒子の短軸が面構造に対して比較的低角である試料において、<~12°の回転軸は石英短軸と線構造にほぼ垂直な方向に弱く集中している。
Misorientation角度分布および回転軸分布は、亜結晶粒回転のみによって形成された境界のmisorientationが~40°未満であり、~45-60°の高角境界がドフィーネ双晶および亜結晶粒回転の組み合わせによって形成されたことを示している。一般にbasal-aすべり系の活動として解釈される面構造垂直なc軸集中をほとんどの試料が示すことを考慮すると、低角境界回転軸のc軸方向への集中は解釈が難しい。しかし、亜結晶粒界が転位の焼きなまし構造であり、定常変形を受けている結晶中の転位の大部分は一般に林立転位であると考えられることを考慮すると、以上のmisorientationの特徴とbasal-aすべりを示すc軸構造の共存は正当化されうる。亜結晶粒界の回転軸は、主すべり系よりもむしろ補助的なすべり系を示すのかもしれない。
全データから単一粒子内の境界を抽出するために、マッピングステップサイズの約9倍より大きく、互いに接触していない粒子のデータセットを作成した。粒子は、ドフィーネ双晶境界を除いた12°以上の境界を粒界として粒認識した。粒子の抽出は、データセットの合計が石英領域の>~80%をカバーし、データセット内に石英粒子が重複しないように各薄片について複数回行った。ドフィーネ双晶型のmisindexed粒子に起因する境界を除去するために、ドフィーネ双晶境界を除外せずに粒認識した際に生じるマッピングステップサイズの5倍以下の粒子をデータセットから除外した。
変成度に関わらず以下の特徴が示された。Misorientation角度分布は低角度(<10°)と60°に二つのピークを示す。 30~40°のmisorientationを有する境界はほとんど存在せず、65°を超えるmisorientationを有する境界は存在しない。misorientationの頻度は、低角から約30°まで徐々に減少し、約45°から60°まで徐々に増加し、60°を超えると急速に減少する。結晶座標系において、<~12°のmisorientation回転軸の分布はc軸付近に弱い集中を示し、m面に対しての極付近に集中を示さない。一方、大部分の試料は面構造に垂直に近い方向にc軸の集中を示す。低角回転軸がc軸付近に集中することと比較して、約15-40°の回転軸分布は、c軸方向から外れた集中を示す傾向がある。45~65°の回転軸分布はc軸方向に強い集中を示す。c軸が面構造に垂直な粒子はc軸が面構造並行で線構造に垂直な粒子よりも低角境界回転軸のc軸方向への集中が弱い傾向にあるが、結晶座標系における回転軸分布の全般的な特徴は変わらない。試料座標系において、石英粒子の短軸が面構造に対してほぼ垂直である試料に関しては、<~12°の回転軸分布は面構造平行で線構造垂直な方向に弱い集中を示す。石英粒子の短軸が面構造に対して比較的低角である試料において、<~12°の回転軸は石英短軸と線構造にほぼ垂直な方向に弱く集中している。
Misorientation角度分布および回転軸分布は、亜結晶粒回転のみによって形成された境界のmisorientationが~40°未満であり、~45-60°の高角境界がドフィーネ双晶および亜結晶粒回転の組み合わせによって形成されたことを示している。一般にbasal-aすべり系の活動として解釈される面構造垂直なc軸集中をほとんどの試料が示すことを考慮すると、低角境界回転軸のc軸方向への集中は解釈が難しい。しかし、亜結晶粒界が転位の焼きなまし構造であり、定常変形を受けている結晶中の転位の大部分は一般に林立転位であると考えられることを考慮すると、以上のmisorientationの特徴とbasal-aすべりを示すc軸構造の共存は正当化されうる。亜結晶粒界の回転軸は、主すべり系よりもむしろ補助的なすべり系を示すのかもしれない。