日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 海洋底地球科学

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)

[SCG56-P05] 海洋底拡大初期のアファール凹地における磁気・MT探査

*吉村 令慧1石川 尚人2Kidane Tesfaye3加々島 慎一4望月 伸竜5Muluneh Ameha3北川 桐香4池間 泰斗6 (1.京都大学防災研究所、2.京都大学大学院人間・環境学研究科、3.アジスアベバ大学、4.山形大学理学部、5.熊本大学大学院先導機構、6.京都大学理学部)

キーワード:アファール凹地、海洋底拡大、マグネットテルリック探査、磁気探査

我々は、海洋底拡大現象が進行しつつあるエチオピア・アファール凹地において、地磁気縞状異常の獲得形成過程を解明する研究プロジェクトを進めている(石川他, 2017)。プロジェクトの最終目標である無人飛行機による空中磁気探査に先立ち、リフトを横切る測線を設定し、2016年度には地上踏査による磁気探査を、2017年度には広帯域Magnetotelluric (MT) 探査を実施した。調査域は、2005~2009年に発生した Dabbahu リフトでのダイク貫入イベントの南方延長にあたり、この地域の地下構造を把握することは、同種のイベントの発生可能性の評価にも資すると考えられる。

地上磁気探査では、GSM-19 オーバーハウザー磁力計 (GEM systems) を使用し、地上高 2.4m にセンサーを維持しつつ4秒サンプリングで、約60km の測定を行った。同時にハンディGPSにより、1秒ごとのトラックログを記録し位置情報とした。外部磁場(日変化や磁気擾乱)の影響を補正するために、測線の西部に位置する Samara 大学敷地内に参照点を設置した。参照点との単純差を求め、磁気異常を概観すると、大局的には先行研究 (Bridges et al., 2012) と調和的なパターンが得られた。一方、短波長の分布については、lava flow を越える個所において、数1000nT に達するスパイク上のシグナルが確認された。しかしながら、その振幅は flow 毎に異なり、磁化強度の違いを反映している可能性が高い。

広帯域MT探査では、地上磁気探査測線に沿うように約4km間隔で計14点において、電磁場変動データを取得した。器材は、MTU5A (Phoenix Geophysics) ならびに ELOG1K-PHX (NTシステムデザイン) を使用し、14点中5点では電場変動のみの収録であった。予察的な解析として、MTU5Aで計測した10点のデータを用いて、二次元逆解析を行った。時系列解析では Chave & Thomson (2003) のコードを、2次元構造解析には Ogawa & Uchida (1998) のコードを使用した。得られた構造は、本研究測線の南方での先行研究 (Didana et al., 2014; 2015) や北方での先行研究 (Desissa et al., 2013; Whaler et al., 2012) に類似して、現在の拡大中心軸周辺の深部から浅部に盛り上がる低比抵抗体に特徴づけられる。さらに、東西には高比抵抗体が存在するが、非対称性が確認された。この非対称性は、拡大軸の両側の拡大速度の違いの原因もしくは結果である可能性がある。
本発表では、地上磁気探査およびMT観測の概要・構造解析結果を報告するとともに、2019年度実施予定の補充観測ならびに空中磁気探査について紹介する。