[SCG56-P24] スマトラ北西沖外縁隆起帯で視認される斜面崩壊地形とその分布
キーワード:スマトラ、前弧、外縁隆起帯、斜面崩壊、海底地すべり
2004年12月末に発生したスマトラ地震(Mw9.2)の1ヶ月半後のNT05-02調査航海(NT05-02 scientific party, scientific party, http://www.jamstec.go.jp/jamstec-e/sumatra/natsushima/bm/contents.html)、 そして、およそ5年後にKY09-09調査航海(Hirata et al., 2012, JAMSTEC report)を用いて、マルチナロービーム測深調査を実施した。2つの調査航海で用いられたマルチナロービーム測深機の有効スワス幅はそれぞれ130度(NT05-02調査航海)および80度(KY09-09調査航海)と狭く、ビーム間隔は両者とも約1度を保持している。マルチナロービーム測深機のこれらの仕様は、水深2000 m相当の海底に対して水平方向に約35m間隔の分解能で海底地形を十分復元でき得ることを示唆している。Hirata et al.は、これら2つの調査によって取得されたマルチナロービーム測深データを統合し、スマトラ島北西沖の前弧域(水深約1000m〜2900m)の、詳細な海底地形データ(3°50’N, 93°10’Eおよび5°00’N、94°10’E内の多角形領域の約37m間隔のグリッドデータ)を作成した。本発表では、Hirata et al.が作成した海底地形データを用いて、スマトラ北西沖前弧域に存在する斜面崩壊地形を同定し、その分布状況などについて地質学的観点から議論する。
まず、海底地形の特徴を同定しやすくするために、斜面角度図(= arctan(dz/ds)、ここでzは水深、sは斜面の最急降下方向を水平面に投影した単位距離ベクトル)、斜面角度変化図(= arctan(d2z/ds2))、斜面方向図(= arctan(dx/dy)、ここでxおよびyは斜面の最急降下方向を水平面に投影した単位距離ベクトルの東向き成分および北向き成分)を作成し、これらを陰影付の海底地形図とともに視察し、斜面崩壊地形を同定した。例として、スマトラ北西沖前弧域の一部の領域(4°03’N, 93°17’Eおよび4°14’N、93°53’E)について、海底地形図(図中(a))、斜面角度図(b)、斜面角度変化図(c)、斜面傾斜方向図(d)および、これらの図から同定・解釈された斜面崩壊地形などの分布図(e)を示す。
NT05-02調査航海の測深機の測深能力が水深3000m未満であったので、図中の西端に存在するはずのスマトラ北西沖のスマトラ海溝(水深約4500m)周辺の海底地形は復元できていないが、スマトラ前弧域の外縁隆起帯の西端を境する、比高約1kmに達する滑落崖地形上部を視認することができる。海底地形図などの解析によって、この滑落崖崖地形は海溝走向方向に連続する複数の斜面崩壊地形によって形成されていることが視認できる。これらの斜面崩壊地形の冠頂部は鋭角であり、ほとんど開析が進んでいないと考えられる。すなわち、これらの滑落崖地形はかなり新しい時期に形成されたと推測される。外縁隆起帯を陸側(東側)に目視していくと、冠頂部が丸みがかった斜面崩壊地形が出現するようになる。海溝側から陸側に行くにつれ、斜面崩壊地形の冠頂部の開析が進んでいる理由は、外縁隆起帯の形成過程から説明される;スマトラ海溝において海洋プレートの上部からはぎ取られた厚い堆積層が、外縁隆起帯の上部へ連続して付加する(乗り上げる)ことによって、外縁隆起帯が形成されていることが確認されている(Mosher et al.,2008, Mar.Geol., Misawa et al., 2014, EPSL)。すなわち、外縁隆起帯は、海溝側(西側)よりも陸側(東側)がより古い時代に付加している。
一方、この一般的ルールから逸脱し、陸側に存在し、開析が進み、いくぶん丸みがかった冠頂部を有する複数の斜面崩壊が多く存在する領域で、冠頂部がまだ鋭角で開析が進んでいない、比較的新鮮な斜面崩壊地形もいくつか同定することができる(例えば、4°06’N, 93°39’E付近の幅1km程度の2つの斜面崩壊地形)。陸側に点在する、これらの比較的新鮮な斜面崩壊地形は、スマトラ北西前弧域に存在すると考えられる主な分岐断層の最近の活動と関係している可能性がある(Hirata et al., 2010, AGU)。
まず、海底地形の特徴を同定しやすくするために、斜面角度図(= arctan(dz/ds)、ここでzは水深、sは斜面の最急降下方向を水平面に投影した単位距離ベクトル)、斜面角度変化図(= arctan(d2z/ds2))、斜面方向図(= arctan(dx/dy)、ここでxおよびyは斜面の最急降下方向を水平面に投影した単位距離ベクトルの東向き成分および北向き成分)を作成し、これらを陰影付の海底地形図とともに視察し、斜面崩壊地形を同定した。例として、スマトラ北西沖前弧域の一部の領域(4°03’N, 93°17’Eおよび4°14’N、93°53’E)について、海底地形図(図中(a))、斜面角度図(b)、斜面角度変化図(c)、斜面傾斜方向図(d)および、これらの図から同定・解釈された斜面崩壊地形などの分布図(e)を示す。
NT05-02調査航海の測深機の測深能力が水深3000m未満であったので、図中の西端に存在するはずのスマトラ北西沖のスマトラ海溝(水深約4500m)周辺の海底地形は復元できていないが、スマトラ前弧域の外縁隆起帯の西端を境する、比高約1kmに達する滑落崖地形上部を視認することができる。海底地形図などの解析によって、この滑落崖崖地形は海溝走向方向に連続する複数の斜面崩壊地形によって形成されていることが視認できる。これらの斜面崩壊地形の冠頂部は鋭角であり、ほとんど開析が進んでいないと考えられる。すなわち、これらの滑落崖地形はかなり新しい時期に形成されたと推測される。外縁隆起帯を陸側(東側)に目視していくと、冠頂部が丸みがかった斜面崩壊地形が出現するようになる。海溝側から陸側に行くにつれ、斜面崩壊地形の冠頂部の開析が進んでいる理由は、外縁隆起帯の形成過程から説明される;スマトラ海溝において海洋プレートの上部からはぎ取られた厚い堆積層が、外縁隆起帯の上部へ連続して付加する(乗り上げる)ことによって、外縁隆起帯が形成されていることが確認されている(Mosher et al.,2008, Mar.Geol., Misawa et al., 2014, EPSL)。すなわち、外縁隆起帯は、海溝側(西側)よりも陸側(東側)がより古い時代に付加している。
一方、この一般的ルールから逸脱し、陸側に存在し、開析が進み、いくぶん丸みがかった冠頂部を有する複数の斜面崩壊が多く存在する領域で、冠頂部がまだ鋭角で開析が進んでいない、比較的新鮮な斜面崩壊地形もいくつか同定することができる(例えば、4°06’N, 93°39’E付近の幅1km程度の2つの斜面崩壊地形)。陸側に点在する、これらの比較的新鮮な斜面崩壊地形は、スマトラ北西前弧域に存在すると考えられる主な分岐断層の最近の活動と関係している可能性がある(Hirata et al., 2010, AGU)。