日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG60] 沈み込み帯へのインプットを探る:海溝海側で生じる過程の影響

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:山野 誠(東京大学地震研究所)、森下 知晃(金沢大学理工研究域地球社会基盤学系)、藤江 剛(海洋研究開発機構)

[SCG60-P01] 2006年及び2007年千島列島沖地震による津波のシミュレーション

*赤井 啓嗣1 (1.徳島大学大学院先端技術科学教育部)

キーワード:アウターライズ地震、千島列島沖地震、津波シミュレーション

2006年11月15日千島列島沖でMw8.3の地震が発生し,それに伴う津波が日本沿岸部および,ハワイ,北中南米で観測された.そのおよそ2か月後の2007年1月13日には,海溝軸より海側でアウターライズ地震が発生し,2006年の地震時と同様,日本沿岸部および北中南米で津波が観測された.2006年地震の際,日本では津波警報が解除された後に最大波が観測され,津波予測における課題となった.その後,2010年チリマウレ地震や2011年東北地方太平洋沖地震で記録された高品質なDART観測記録により,遠地津波における地殻の弾性や海水の圧縮性の効果が確認された。これらの研究成果により遠地津波のシミュレーション技術は向上し,2010年チリマウレ地震や2011年東北地方太平洋沖地震の津波は高精度に再現された。本研究ではこの最新の遠地津波シミュレーション技術を利用して,2006年および2007年千島列島沖地震の津波を再解析する。本研究の目的は,2006年及び2007年千島列島沖地震の津波が先行研究である2010年チリマウレ地震や2011年東北地方太平洋沖地震の津波と同程度に再現可能でることを確認することである。特にこれまで行われていないアウターライズ地震である2007年千島列島沖地震に注目する。

地殻の弾性,海水の密度成層と分散性の効果を入れた非線形長波式を差分法で解くことにより得られた2006年及び2007年千島列島沖地震の津波波形とDART観測点で観測された津波波形を比較してその再現性を検討した.入力に用いる断層モデルは建築研究所のHPで公開されているモデル及びFujii and Satake(2008)で示されているものを用いた.地形データは5分間隔にリサンプリングしたGEBCOを利用した。地震発生から24時間の津波を計算した。計算ステップ間隔は5秒とした。

計算の結果,2006年千島列島沖地震津波においては、到達時刻及び振幅ともに先行研究と同程度の再現性が得られた.しかし,2007年千島列島沖地震津波のシミュレーションにおいては観測波形の再現性はやや低かった.後続波にいくほどずれが大きくなることから海岸での反射や海底地形に屈折が影響していると推察される。今後,計算法や地形分解能を変えて影響を確認するとともに,必要があれば波源モデルについての検討も行う予定である.