[SCG61-P13] 断層活動性評価手法の検討(断層の活動条件把握への新たな試み) その1
-塩ノ平断層における全体計画と現状-
キーワード:SIMFIP、塩ノ平断層、活断層、福島県浜通りの地震、破砕部性状、注水試験
「ごく最近動いた断層(以下活動区間と呼ぶ)」の近傍に「今後動く可能性のある断層(以下非活動区間と呼ぶ)」がある場合,「今後動く可能性のある断層」と「ごく最近動いた断層」とでは応力状態に違いがあり,両断層には”活動しやすさ”に違いあると想定される.しかし,現在の原子力規制基準の考え方においては、断層の連動性に関する知見の不足から安全側に一連の断層として評価している。
筆者らは,非活動区間が断層活動を生じた場合に,活動区間も含めて一連の断層として本当に動くのかを明らかにするため,断層活動性評価手法の開発を目指し,活動区間と非活動区間との違いに着目した調査・分析を実施している.
2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(以下4.11地震と呼ぶ)によって,いわき市田人町旅人滑石から石住綱木北西に至る約14kmの区間に,北北西から南南東へ延びる地表地震断層が出現した.この地表地震断層は石山ほか(2011)によって塩ノ平断層と命名された.4.11地震による地表地震断層は,井戸沢断層の一部(堤・遠田,2012の井戸沢断層西側トレース)にあたる.今泉ほか(2018)によれば,確認された地表地震断層以南においていわき市旅人滑石から川部町佐倉西方まで,山玉町脇川から茨城県北茨城市関本町小吹まで活断層が識別されているが,この区間に地表変位は現れなかった.本報告では,塩ノ平地表地震断層が表出した区間を活動区間,塩ノ平地表断層以南の活断層を識別する区間を非活動区間としている.
筆者らは,塩ノ平断層及びその南方延長部を対象として調査を進めており,これまで露頭調査結果(亀高ほか2015)や破砕帯の摩擦特性(青木ほか2015,2016)について報告しており,現在は原位置における応力状態を把握するために断層スリップ試験を実施している.今後,調査結果に基づき,断層破砕部の岩組成,応力状態,断層の最大静止摩擦力,間隙水圧等の関係から断層が活動する際の挙動解析を行う予定としている.本講演では,調査計画の全体概要及び断層スリップ試験の詳細について報告を行う.
断層スリップ試験では,試錐で確認した地下の割れ目の上下にダブルパッカーを掛け地上から高圧の水を注入して割れ目のずれを人工的に発生させ,その3次元変位量(マイクロメータからミリメーター)を測定できる装置および手法を用いる。本装置はSIMFIP (Step-rate Injection Method for Fracture In-situ Properties) probe と命名された(Guglielmi et.al. 2013)。本プローブおよび手法は、フランスにおけるCO2の地中貯蔵研究のためにGuglielmiによって設計製作され、フランス南部の地下研究施設(LSBB)で最初に適用された(Guglielmi、et.al. 2015)。その後フランスのTournemire、スイスのMont Terri、米国サウスダコタ州の金鉱山跡などの地下研究施設における断層を対象に原位置試験が実施されている。本装置は、ダブルパッカーで区切られた区間の間隙水圧を高めることにより断層のずれを発生させ、その3次元のずれ量を定量的に測定することができ、地下水、石油、CO2、放射性廃棄物など地盤中のリークが問題となる現象の解明に役立つ。また、マイクロメータースケールで断層変位や孔内圧力、誘発された地震波を観測する手法であり、断層帯の摩擦と応力状態の推定が可能であることから、断層周辺の水理・力学の連成現象を理解するための手法として地震発生メカニズムの解明にも役立つものと筆者らは考えている。なお、本装置を使った原位置注水実験は日本での適用は初めてであり、活断層を対象にした原位置試験としては世界初である。
筆者らは,非活動区間が断層活動を生じた場合に,活動区間も含めて一連の断層として本当に動くのかを明らかにするため,断層活動性評価手法の開発を目指し,活動区間と非活動区間との違いに着目した調査・分析を実施している.
2011年4月11日に発生した福島県浜通りの地震(以下4.11地震と呼ぶ)によって,いわき市田人町旅人滑石から石住綱木北西に至る約14kmの区間に,北北西から南南東へ延びる地表地震断層が出現した.この地表地震断層は石山ほか(2011)によって塩ノ平断層と命名された.4.11地震による地表地震断層は,井戸沢断層の一部(堤・遠田,2012の井戸沢断層西側トレース)にあたる.今泉ほか(2018)によれば,確認された地表地震断層以南においていわき市旅人滑石から川部町佐倉西方まで,山玉町脇川から茨城県北茨城市関本町小吹まで活断層が識別されているが,この区間に地表変位は現れなかった.本報告では,塩ノ平地表地震断層が表出した区間を活動区間,塩ノ平地表断層以南の活断層を識別する区間を非活動区間としている.
筆者らは,塩ノ平断層及びその南方延長部を対象として調査を進めており,これまで露頭調査結果(亀高ほか2015)や破砕帯の摩擦特性(青木ほか2015,2016)について報告しており,現在は原位置における応力状態を把握するために断層スリップ試験を実施している.今後,調査結果に基づき,断層破砕部の岩組成,応力状態,断層の最大静止摩擦力,間隙水圧等の関係から断層が活動する際の挙動解析を行う予定としている.本講演では,調査計画の全体概要及び断層スリップ試験の詳細について報告を行う.
断層スリップ試験では,試錐で確認した地下の割れ目の上下にダブルパッカーを掛け地上から高圧の水を注入して割れ目のずれを人工的に発生させ,その3次元変位量(マイクロメータからミリメーター)を測定できる装置および手法を用いる。本装置はSIMFIP (Step-rate Injection Method for Fracture In-situ Properties) probe と命名された(Guglielmi et.al. 2013)。本プローブおよび手法は、フランスにおけるCO2の地中貯蔵研究のためにGuglielmiによって設計製作され、フランス南部の地下研究施設(LSBB)で最初に適用された(Guglielmi、et.al. 2015)。その後フランスのTournemire、スイスのMont Terri、米国サウスダコタ州の金鉱山跡などの地下研究施設における断層を対象に原位置試験が実施されている。本装置は、ダブルパッカーで区切られた区間の間隙水圧を高めることにより断層のずれを発生させ、その3次元のずれ量を定量的に測定することができ、地下水、石油、CO2、放射性廃棄物など地盤中のリークが問題となる現象の解明に役立つ。また、マイクロメータースケールで断層変位や孔内圧力、誘発された地震波を観測する手法であり、断層帯の摩擦と応力状態の推定が可能であることから、断層周辺の水理・力学の連成現象を理解するための手法として地震発生メカニズムの解明にも役立つものと筆者らは考えている。なお、本装置を使った原位置注水実験は日本での適用は初めてであり、活断層を対象にした原位置試験としては世界初である。