日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM18] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2019年5月26日(日) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:清水 久芳(東京大学地震研究所)、佐藤 雅彦(東京大学地球惑星科学専攻学専攻)

[SEM18-P08] エチオピア・アファール凹地、プレート拡大境界軸域での地球電磁気学的探査

*石川 尚人1吉村 令慧2Tesfaye Kidane11東野 伸一郎3加々島 慎一4望月 伸竜6Ameha Muluneh5北川 桐香4角屋 守7小原 徳昭10乙藤 洋一郎9船木 實小木曽 哲1藤井 昌和8 (1.京都大学大学院人間・環境学研究科、2.京都大学防災研究所、3.九州大学工学研究院、4.山形大学、5.アジスアベバ大学、6.熊本大学、7.エクストリーム コンポジット ジャパン、8.国立極地研究所、9.地球年代学ネットワーク、10.ロボティスタ、11.University of KwaZulu Natal)

キーワード:プレート拡大境界、海洋底拡大、磁気異常、地球電磁気学的調査、小型無人飛行機

エチオピア・アファール凹地は、大陸リフティングから進行して、現在海洋底拡大現象の開始時期の段階にあり、中央海嶺が陸上に露出していると考えられている。そのため、アファール凹地は、そのほとんどが海洋下で起こっているプレート拡大境界での地学現象を陸上で直接的に探査することができるユニークな地域である。そこで我々は、プレート拡大軸域での磁気異常の分布と構造、その形成過程を明らかにする目的で、磁気探査、MT探査といった地球電磁気学的探査を主体とする調査研究を行っている。その計画の概要、2016~2018年度の調査と予察的な解析結果を報告する。
調査対象地域はアファール凹地のDabbahu火山周辺域(Dabbahu Rift)である。そこでは、2005-09年にかけて活発な地震活動と正断層系の形成があり、一部に溶岩の噴出が見られた。 GPS/地震観測のデータ解析により、長さ10〜60km、幅1〜3mの局所的な伸長(岩脈貫入)が繰り返され、総計として巾8m、長さ60km、深さ2〜10kmの範囲で岩脈の貫入があったと推定されている。よって、この地域は海洋底拡大軸域の地下構造や磁気異常の獲得形成過程を探るための絶好のフィールドである。そこで我々は、小型無人飛行機を活用した航空探査と、地形的制約で地域は限定されるものの試料採取を伴う直接的な地上調査を計画している。航空探査では、低飛行高度(複数高度)での広域で詳細な空中磁気探査を行う。地上探査では、磁気探査、MT探査、地表溶岩流の試料採取を行う。空中・地上磁気探査から詳細な磁気異常マップを構築し、MT探査結果とあわせて、地下構造を地球電磁気学的視点から明らかにする。採取岩石の古地磁気・岩石磁気学的解析、および岩石学的解析からの情報も加味して、Dabbahu Riftの磁気異常の分布と構造、その形成過程の解明を目指す。
2016〜2018年度の現地調査では、岩脈貫入推定位置の延長線上を横切る測線(約55km)を設定し、徒歩による地上磁気探査と14地点でMT探査を行った。また、42地点で古地磁気試料(160個)、38地点で化学分析等の岩石学的解析用の試料(70個)を採取した。磁気探査により測線中央部を軸として対称的な正負の磁気異常が観測され、MT探査により測線中央に熱源の存在を示唆する低比抵抗域、その両側に高比抵抗域が認められた。溶岩流の古地磁気解析では中央部で正極性、測線東端で逆極性の残留磁化が検出され、岩石学的解析からは中央部から外側への化学組成の系統的な変化が認められた。2019年度は、エチオピア政府より許可が得られたことから小型無人飛行機を用いた広域での航空磁気探査を実施する。また、既存測線を延長し、各観測点で長時間でのMT観測を行うことで、より深部の詳細な比抵抗構造の解析を目指す。