日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 測地学一般・GGOS

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、若杉 貴浩(国土交通省国土地理院)

[SGD03-P02] 迅速・高精度なGNSS定常解析システムの構築に関する研究(2)

*中川 弘之1 (1.国土交通省国土地理院)

キーワード:GNSS、PPP-AR、GEONET定常解析、GEONET

国土地理院はGEONETで取得されるGNSSデータを定常的に解析し、日本全国の地殻変動を監視している。この結果は、地震活動の評価や火山活動の監視における基礎的な資料として活用されている。

しかし、地震発生のタイミングや火山活動の進行速度によっては、現在のGEONET定常解析の性能をもってしても迅速性や時間分解能が不十分な場合もあり、より迅速で高い時間分解能を持つ定常解析手法が求められている。

そこで、我々は端数の整数不確定性を決定する精密単独測位法(PPP-AR法)に着目した。これは、GNSS衛星の精密な軌道・時刻情報に加えて位相端数バイアス(Fractional Cycle Bias; FCB)と呼ばれる補正情報を用いることで、観測点毎に干渉測位法に匹敵する精度で精密単独測位を行うものである。その特徴は、格段に少ない計算負荷で迅速に、1エポックごとの位置を算出できることである。超巨大地震で広域な地殻変動が発生した場合についても、電子基準点の変位を直接に算出でき固定点が不要であるという利点もある。

国土地理院では、PPP-AR法をベースに現在の定常解析よりも迅速・高精度な GNSS 解析手法を開発し、将来のGEONET定常解析を想定してこれを実装したプロトタイプシステムを開発すること目的とする研究開発を2017年度より3年計画で実施している。この研究では、GEONETの1秒値データを用いて、定常的かつ安定的に、1秒間隔で水平方向のばらつき約1cmの解を、データ収集の約2時間後までに算出することを目標としている。

2018年度は開発中のプロトタイプシステムを用いて、2018/7/12~8/12の31日間について試験解析を実施した。試験期間においてはGEONET全点について各日1回、0時~翌0時までの24時間の1秒時系列解を計算し、推定した衛星軌道・クロック及び求められたGEONETの時系列解の評価を行った。まず、推定した衛星軌道及び衛星クロックの品質評価としてIGS最終暦及びCODE暦のクロックとの差のRMSを計算した。暫定的な結果として、軌道情報に関してはGPSではおよそ2.7cm、GLONASSではおよそ8.8cm、また、クロックに関しては、GPSでは4.15ns、GLONASSについては6.02nsが得られた。続いて、GEONET時系列解の再現性の評価として、時系列の水平成分の標準偏差の度数分布を求めた。その結果、度数のピークは標準偏差が1.0~1.2cmの区間で、全体のおよそ25%の時系列がこの区間に含まれた。一方で、本研究で目標としている標準偏差1cm以下となった時系列の割合は全体の21%であり、1.4cm以下となった割合が68%であった。

本発表では、その原因について考察を進めると共に、軌道・クロックの品質及び時系列解の品質の改善方法について検討を行う予定である。