日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 測地学一般・GGOS

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、若杉 貴浩(国土交通省国土地理院)

[SGD03-P03] 天竜船明長基線レーザー伸縮計の特性とスロースリップの検知能力

*勝間田 明男1高森 昭光2新谷 昌人2 (1.気象庁気象研究所、2.東京大学地震研究所)

キーワード:レーザー伸縮計、ヨウ素安定化レーザー、スロースリップの観測

Katsumata et al. (2010)は浜松市天竜区の船明トンネルに基線長400mのレーザー伸縮計を構築して、地殻変動観測を行った。その結果、当レーザー伸縮計により短期的スロースリップを検知するとともに、スペクトル解析から長期的スロースリップをGNSSよりも早期に検知可能であることを明らかにした。しかしながら、光源に用いたヨウ素安定化He-Neレーザーの発振管の寿命は比較的短く、数年に渡る連続観測には適さなかった。光源を以前のヨウ素安定化レーザーからAraya et al. (2002)によるヨウ素安定化YAGレーザーに入れ替えて、レーザー伸縮計を再構成し2018年3月から観測を始めた。変動速度の速い変動に対応するため、データ収録は以前の1kS/sから10kS/sと高速化した。 
 これまでに得られた数ヶ月程度の伸縮データを以前のHe-Neレーザーを用いて得られたデータと比較した。長期トレンド・気圧応答・潮汐応答・ノイズスペクトルレベルなどについて比較を行った。以前のデータには10-7 strain/year程度のトレンドが認められたが、レーザー装置入れ替え後のデータにはそのようなトレンドは認められていない。以前にもトレンドは変化している様子が認められた。以前に観測されたトレンドは局所的な原因による可能性がある。気圧応答・潮汐応答については、大きな変化は認められない。以前のデータからトレンドを除去したデータと、今回得られたデータのスペクトルレベルを比較したが、0.1秒から数ヶ月程度の周期の変動レベルにおいて、ほぼ一致していると見られた。
 Ide et al. (2007)は、スロー地震の地震モーメントはその継続時間に比例していることを示した。地震モーメントと継続時間が比例しているということは、ひずみ変化のレートは規模によらずに一定と解釈される。また、現在までのところ、超低周波地震(VLFE)と短期的スロースリップの間のイベントは知られていない。Katsumata et al.(2010)では、天竜船明レーザー伸縮計は、短期的スロースリップと同程度のひずみレートをもつ現象は1日で検知可能と見積もられている。もし継続時間1日程度のスロースリップが発生しているとすると、天竜船明レーザー伸縮計により検知可能とみられる。