日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD03] 測地学一般・GGOS

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:松尾 功二(国土地理院)、横田 裕輔(東京大学生産技術研究所)、若杉 貴浩(国土交通省国土地理院)

[SGD03-P05] 固体地球の流体核共鳴を含む潮汐ラブ数の算出方法

*原田 雄司1,2大久保 修平3 (1.澳門科技大学太空科学研究所月球与行星科学国家重点実験室、2.東京⼤学地震研究所海半球観測研究センター、3.東京⼤学地震研究所高エネルギー素粒子地球物理学研究センター)

キーワード:地球潮汐、地球回転、地球内部構造

固体地球の非剛体性が地球潮汐や地球回転に及ぼす効果は核やマントルの力学的挙動を理解する上で重要である.その典型的な一例として挙げられるのが地球の自転運動の微小な擾乱,特に章動に対する扁平な流体核による力学的共鳴の影響,即ち自由核章動の励起である.この自由核章動は回転運動のみならず潮汐変形をも増幅させる効果を有する.

固体潮汐に対する流体核の影響は笹尾他の理論(以下SOS理論)に基づいて予測可能である.このSOSでは球対称地球の静的変形の計算手法(例えば竹内や斎藤)を応用することで流体核共鳴が潮汐変形に及ぼす効果を比較的簡易に見積もる事が出来る.この近似的手法は更に拡張されて後に国際天文学連合における章動理論の基礎(例えばマシューズ他)としても採用(IAU2000)されている.

本研究では潮汐変形を表現するラブ数をSOS理論に基づいて見積もる為に幾つか新しい技巧を施したので,その結果を報告する.その工夫とは主に以下の二点である.(尚,これらの点を除けば今回の報告と類似の内容が昨年度連合大会,同測地学会講演会でも既に報告されている.ここでは前回の詳細は省略するので当該学会の投稿原稿を参照されたい.)

一つ目の工夫は固体層の動径関数(以下y関数)の独立解の計算であり,ここでは特にy関数の数値積分において一部の独立解が計算不要となる事を示す.ここで言うy関数には流体核共鳴の影響を含む動的y関数と含まない静的y関数の両方が該当する.この内の静的y関数を算出する方法の一つは潮汐変形に限らず地球の静的変形に対して一般的に広く用いられている竹内や斎藤の手法であり,その中では原点で正則な独立解のみ積分すれば良い.それに対して動的y関数に関しては彼等の方法を全く同じ様に適用する事が出来ないので,その代わりに原点で発散する独立解も積分して,それら全ての独立解を利用する.この場合,固液境界の粘性結合を無視すれば,その境界における剪断応力も打ち消される.それに応じて積分すべきy関数の独立解を減らす事が出来る.

二つ目の工夫は液体層の動径関数(以下q関数)の独立解の計算であり,ここでは特にq関数の数値積分において密度の鉛直微分が計算不要となる事を示す.その独立解の求め方は液体の非圧縮性を仮定すれば単なる重力ポテンシャルのポワソン方程式の積分に帰着する.それは竹内や斎藤の手法でもSOSでも同じ事である.但し単純にSOSのみ踏まえてポワソン方程式からq関数を積分するなら,その際に密度自体の鉛直分布でなく密度勾配の鉛直分布が必要となる.それに対して予めクレロー方程式から扁平率の鉛直分布を算出しておけば,この扁平率を利用する事でも実はq関数の独立解が求められる.この場合,クレロー方程式には密度と重力のみ含まれており密度勾配まで含まれないから,その結果として密度勾配は陽に現れない形で独立解を求める事が出来る.