日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS10] 地震活動とその物理

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:勝俣 啓(北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

[SSS10-P01] 津波地震の前震および余震活動の時空間的特徴と波形的特徴

*劉 弋鋒1伊藤 喜宏2太田 和晃2片上 智史1 (1.京都大学理学研究科地球惑星科学専攻、2.京都大学防災研究所)

キーワード:津波地震、地震活動、波形処理

津波地震は短周期マグニチュードに比べて大きな津波をもたらす異常な地震である。それゆえ、沿岸部に住んでいる人があまり揺れを感じず、避難行動につながりにくいため、甚大な津波被害へとつながる可能性が高い。一方津波地震の観測事例は、通常の地震に比べて、その観測事例が少ないため、その発生メカニズムについては未だ明らかではない。本研究では津波地震の発生メカニズムの解明を目的として、過去に発生した3つの津波地震(ニカラグア(1992/09/02, Mw7.7)・ジャワ島(2006/07/17, Mw7.7)・メンタワイ(2010/10/25, Mw7.8))の前震・余震活動を調べた。さらに津波地震と同様の特徴を示すやや小規模の地震が、前震や余震活動の中に含まれていないか調べた。
はじめに、ISCやUSGSなどで公開されている地震カタログとIRISによる波形の記録を用い、前震並びに余震活動の抽出、または時空間的特徴の評価を行った。ニカラグア本震の発生前には、震央から約10km離れた西側でMb5前後の前震(1992/08/10 06:09:20 Mb 5.2, 1992/08/10 06:34:14 Mb4.7, 1992/08/11 05:23:51 Mb 5.1, 1992/08/13 08:41:17 Mb 4.7)が四つ発生した。ここでは、本震前の三年間の地震カタログ中のイベントを津波地震の震源を中心とした5度*5度の領域を1度刻みで分割し、各セグメントに含まれる地震の活動度を調べた。3つの地域ごとに分析した結果、津波地震の本震域の周辺ではいずれも静穏期が存在していることが分かった。また、ニカラグア地震の余震に関しては、前震と同じセグメントで余震の静穏期が検出された。
ニカラグア地震の本震発生前には、本震の震源域付近の前震活動にマイグレーションが観測された。マイグレーションに含まれているイベントと同領域で発生した余震の波形を、本震の波形と比較した。ここでは、各イベントに対して、表面波とS波の最大振幅の比を求めることでそれらを比較した。その結果、津波地震の本震の値は、表面波とS波の比が圧倒的に高い値を示すのに対して、前震および余震については津波地震と同様の特徴を示していない。これは本震のみが津波地震的な特徴を示す断層運動であるに対し、津波震源域内で発生する小規模な地震は通常の地震と同様の破壊現象であることを示唆する。