[SSS10-P17] 2018年9月6日胆振東部の地震の計測震度距離減衰の特徴から判ること
キーワード:計測震度の距離減衰式、2018年9月6日胆振東部の地震、最上部マントル内の地震
2018年9月16日に発生したMw6.6(MJMA6.7)の胆振東部の地震は、深さ35km(F-net CMT解.JMAは深さ37km)で太平洋スラブ内の地震ではないにも関わらず、日高山脈の西側の石狩低地で大きい震度が観測されるとともに、岩手や北海道東部方面には、スラブを伝播したことを示す太平洋岸沿いに広がる異常震域も見られた。この地震で観測された震度と、我々が提案している、表層地盤の影響と震源の物理的なタイプを考慮した地表の計測震度の距離減衰式[Matsu'ura et al. (2018)]とを比較した。その結果、石狩低地等震源の西側で震源距離が100km程度以下の地域では、スラブ内地震と類似する、高い短周期レベル=高い応力降下量の特徴を示す一方、日高山脈の東側の北海道東部や本州の青森東部、岩手などの太平洋沿岸の観測点では、プレート間地震と同程度で、スラブ内地震よりは弱い異常震域を示していた(図)。
この地震が日高山脈西側にある脆性破壊可能な陸側の浅いマントル内で発生したと考えると、上記特徴を以下のようによく説明できる。やや深い地震で応力降下量が高く、直達波が卓越する石狩低地側で、通常の浅い地殻内地震より広範に大きい震度が観測された。スラブを通じて太平洋沿岸域に生じる異常震域は、スラブ直上に震源があるプレート間地震と同程度に、効率良く高周波が震源からスラブに伝播したことを示しており、震源からスラブまでの物性の不均一度は地殻より格段に低いと推定される。
表層地盤の影響を上手に取り除けて、物理的な震源タイプを考慮した距離減衰式は、震度分布から震源過程を推定する良い手段となる。また、この地震のような深さでの高い短周期レベルは、日高山脈西側のような脆性破壊可能な陸側マントルが存在する領域でだけ考慮すれば良いことになり、下部地殻の脆性破壊リスクを全国一律に考える必要は無い。
本研究は地震調査研究推進本部の支援事業の一部として文部科学省からの委託によって実施された。
この地震が日高山脈西側にある脆性破壊可能な陸側の浅いマントル内で発生したと考えると、上記特徴を以下のようによく説明できる。やや深い地震で応力降下量が高く、直達波が卓越する石狩低地側で、通常の浅い地殻内地震より広範に大きい震度が観測された。スラブを通じて太平洋沿岸域に生じる異常震域は、スラブ直上に震源があるプレート間地震と同程度に、効率良く高周波が震源からスラブに伝播したことを示しており、震源からスラブまでの物性の不均一度は地殻より格段に低いと推定される。
表層地盤の影響を上手に取り除けて、物理的な震源タイプを考慮した距離減衰式は、震度分布から震源過程を推定する良い手段となる。また、この地震のような深さでの高い短周期レベルは、日高山脈西側のような脆性破壊可能な陸側マントルが存在する領域でだけ考慮すれば良いことになり、下部地殻の脆性破壊リスクを全国一律に考える必要は無い。
本研究は地震調査研究推進本部の支援事業の一部として文部科学省からの委託によって実施された。