日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS13] 強震動・地震災害

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:栗山 雅之(一般財団法人 電力中央研究所 地球工学研究所 地震工学領域)、染井 一寛(一般財団法人地域地盤環境研究所)

[SSS13-P08] 平成30年北海道胆振東部地震の広帯域地震動シミュレーション

*岩城 麻子1森川 信之1前田 宜浩1久保 久彦1藤原 広行1 (1.防災科学技術研究所)

キーワード:平成30年北海道胆振東部地震、強震動、広帯域地震動シミュレーション、内陸地殻内地震

1.はじめに
2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震(MJMA6.7)弱を観測するなど各地に強い揺れがもたらされた.震源域周辺は,陸域としては他の地域と比べて深い場所で地震活動が見られる地域に相当し(地震調査委員会,2018),これまでの内陸地殻内地震の地震動予測で対象としていない深さである.このような深い地殻内地震による強い揺れが,従来の地震動予測の枠組みで説明可能かどうか検証する必要がある.

2.広帯域地震動シミュレーション
この地震を対象として強震動予測レシピ(地震調査委員会,2017)に基づく特性化震源モデルを用いたハイブリッド法による広帯域地震動シミュレーションを行い、観測地震動の再現を試みた.断層面は強震波形インバージョンによる断層すべり分布(久保・他,本大会)とF-netモーメントテンソル解を参考に,長さ28km,幅22kmの一枚面を下部地殻内に設定した.内陸地殻内地震(活断層で発生する地震)についてのレシピ(ア)に従って微視的断層パラメータを設定し,破壊開始点を断層中央深さ35km,その上部にアスペリティを一つ置いた.地震モーメントは断層面積と地震モーメントの経験式(入倉・三宅2001)を仮定して設定したものであり,短周期レベルは壇・他(2001)の平均値である.これを基本モデルとする.
J-SHIS深部地盤モデルv2 (藤原・他,2009, 2012)を用いて,接続周期1秒で三次元差分法(GMS; 青井・他,2004)と統計的グリーン関数法(壇・佐藤,1998)のハイブリッド法で工学的基盤面上の広帯域地震動を計算し,さらにAVS30,最大速度と計測震度の関係式(藤本・翠川,2005, 2006)によって地表計測震度を求めた.
長周期帯域の速度波形は,多くの地点で主要なパルスの到達時刻や最大振幅値などの特徴が観測記録と調和的であった.広帯域では地表計測震度について観測記録と比較したところ,全体に過小評価傾向であった.その原因として,震源モデルや深部および浅部の地盤構造モデルが十分でないことが考えられるが,ここでは計算領域全体で短周期成分が過小評価になっていることから,まずは短周期レベルの値が変わることによる計算地震動への影響を調べることにした.この地震の震源特性について,友澤・他(2018, 地震学会)では地震モーメントに対する短周期レベルを,解析条件によって壇・他(2001)の平均値の1~2倍程度と推定している.この知見を参照し,基本モデルよりもアスペリティ面積が小さく,短周期レベルが壇・他(2001)の平均値の1.5倍程度の震源モデルを設定すると,計測震度の再現性が全体的に向上した.

3.まとめと課題
本検討では,この地震に対する特性化震源モデルについて従来の内陸地殻内地震よりも短周期レベルを高めに設定することで観測記録の説明性が向上した.これは地震の深さや発生環境に特徴づけられる震源特性を反映している可能性がある.
今後は,震源特性についてさらに検討し長周期帯域も含めた再現性向上を試みる.また,特に短周期地震動が卓越した観測点において,表層地盤による増幅特性を考慮する必要があると考えている.

謝辞:気象庁,北海道,札幌市,K-NET,KiK-netの強震波形記録を使用しました.