[SSS15-P09] 長野県南部,伊那谷断層帯の構造発達史
キーワード:伊那谷断層帯、断層岩、活断層、粘土鉱物
中部日本は数多の活断層が分布している,日本有数の活断層密集地域である(活断層研究,1991).これらの活断層の多くはNE-SW走向とNW-SE走向を有する高角横ずれ断層群として特徴づけられる.このように横ずれが卓越する地域にありながら,長野県南部に分布する伊那谷断層帯は低角な逆断層として特徴付けられる特異な断層帯である.また,中部地方に分布する活断層の多くは,NE-SW走向とNW-SE走向のうち,どちらか一方のトレンドに分布するが,伊那谷断層帯は一つの断層帯の中でNE-SW走向とNW-SE走向両方の姿勢を持つという点においても特異である.
伊那谷断層帯は,従来NE走向の並列する逆断層群として考えられてきたが,地震調査研究推進本部(2007)によって断層帯南方の断層群に対する活動性の評価が改められ,起震セグメントとしては伊那谷断層帯主部と伊那谷断層帯南東部の2つに区分されることが認識された.伊那谷断層帯主部と南東部はNW走向の活断層である下条山麓断層によって接続されており,従来考えられてきたよりも複雑な断層幾何学を形成していることが分かった.このように推本(2007)によってその運動像に対する認識が改められた伊那谷断層帯が,どのようにして特異な形態を発達させてきたのかを解明することは中部地方のテクトニクスを理解するうえで重要な課題になると考えられる.
伊那谷断層帯の構造発達史を解明するために,より長期の変形を記録していることが期待される花崗岩分布域において調査を実施した.地表踏査では断層の形態や運動センス,断層岩の性状などに着目して調査を行った.調査にて得られたデータから室内作業にて,多重逆解法(山路,1999)を用いた応力解析を行った.また得られた断層岩試料はXRD分析を行い、含有する粘土鉱物の同定を行った。
断層同士の切断関係や,応力場の推定から,本地域の変形は3つの変形ステージに区分された.Stage:1~Stage:2は高角N-S走向のカタクレーサイトを伴う変形であり,Stage:3は低角~中角の断層ガウジを伴う変形であった.Stage:1では,E-W圧縮の横ずれ応力解が,Stage:2ではNW-SE圧縮の横ずれ応力解が,Stage:3ではENE-WSW圧縮の横ずれ~逆断層応力解が検出された.
XRD分析を行った結果、全ての断層ガウジにIlliteとSmectiteが含まれ、試料によってその量比を変化させていた。
本地域は西南日本東部に位置し,日本海拡大に伴う,地塊の時計回り回転と,伊豆弧衝突に伴う地塊の反時計回り回転を被っているため,応力方向について議論するためには,この影響を補正する必要がある.補正後の応力場は,Stage:1:東西圧縮応力場,Stage:2:南北圧縮応力場,Stage:3:東西~北東-南西圧縮応力場となり,香取(2016MS)で検出された屏風山断層に同様の補正を施した応力方向とよく一致する.したがって,今回検出された応力は,中部地方に広域的に作用する応力であるといえる.広域応力の原因をプレートの動きに求めるなら,本地域で最も古い断層岩であるカタクレーサイトは40Ma以降の太平洋プレートの西進を駆動力として形成された可能性がある.
伊那谷断層帯は,従来NE走向の並列する逆断層群として考えられてきたが,地震調査研究推進本部(2007)によって断層帯南方の断層群に対する活動性の評価が改められ,起震セグメントとしては伊那谷断層帯主部と伊那谷断層帯南東部の2つに区分されることが認識された.伊那谷断層帯主部と南東部はNW走向の活断層である下条山麓断層によって接続されており,従来考えられてきたよりも複雑な断層幾何学を形成していることが分かった.このように推本(2007)によってその運動像に対する認識が改められた伊那谷断層帯が,どのようにして特異な形態を発達させてきたのかを解明することは中部地方のテクトニクスを理解するうえで重要な課題になると考えられる.
伊那谷断層帯の構造発達史を解明するために,より長期の変形を記録していることが期待される花崗岩分布域において調査を実施した.地表踏査では断層の形態や運動センス,断層岩の性状などに着目して調査を行った.調査にて得られたデータから室内作業にて,多重逆解法(山路,1999)を用いた応力解析を行った.また得られた断層岩試料はXRD分析を行い、含有する粘土鉱物の同定を行った。
断層同士の切断関係や,応力場の推定から,本地域の変形は3つの変形ステージに区分された.Stage:1~Stage:2は高角N-S走向のカタクレーサイトを伴う変形であり,Stage:3は低角~中角の断層ガウジを伴う変形であった.Stage:1では,E-W圧縮の横ずれ応力解が,Stage:2ではNW-SE圧縮の横ずれ応力解が,Stage:3ではENE-WSW圧縮の横ずれ~逆断層応力解が検出された.
XRD分析を行った結果、全ての断層ガウジにIlliteとSmectiteが含まれ、試料によってその量比を変化させていた。
本地域は西南日本東部に位置し,日本海拡大に伴う,地塊の時計回り回転と,伊豆弧衝突に伴う地塊の反時計回り回転を被っているため,応力方向について議論するためには,この影響を補正する必要がある.補正後の応力場は,Stage:1:東西圧縮応力場,Stage:2:南北圧縮応力場,Stage:3:東西~北東-南西圧縮応力場となり,香取(2016MS)で検出された屏風山断層に同様の補正を施した応力方向とよく一致する.したがって,今回検出された応力は,中部地方に広域的に作用する応力であるといえる.広域応力の原因をプレートの動きに求めるなら,本地域で最も古い断層岩であるカタクレーサイトは40Ma以降の太平洋プレートの西進を駆動力として形成された可能性がある.