日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SSS15-P17] 南海地震の災害記録を海底地形・海底面調査から掘り起こす:高知県須崎市野見湾を例に

*谷川 亘1村山 雅史2徳山 英一3田中 幸記4井尻 暁1星野 辰彦1廣瀬 丈洋1北田 数也5富士原 敏也5 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構高知コア研究所、2.高知大学 農林海洋科学部、3.高知大学 海洋コア総合研究センター、4.高知大学、5.国立研究開発法人海洋研究開発機構)

キーワード:地震性沈降、黒田郡、海食台、サイドスキャンソナー、サブボトムプロファイラー

高知県須崎市野見湾沿岸地域では、「黒田郡」もしくは「野見千軒」「大谷千軒」と呼ばれる白鳳地震(684年)によって沈んだ集落の伝承が残されている。また、野見湾海底において井戸の目撃情報が時々報告されている。しかし、井戸や沈んだ集落の痕跡となる正確な記録や科学的な調査がほとんど実施されていない。そこで本研究では、井戸の目撃情報がある須崎市戸島北東部と大谷地区南部の海底を対象に人工物の痕跡調査を実施した。

本調査は高知大学の実習調査船「ネプチューン」により、サイドスキャンソナーを用いた海底地形調査と海底表層イメージ調査、サブボトム・プロファイラを用いた海底下構造調査、および360°水中カメラを用いた海底観察を実施した。

海底地形調査の結果、戸島北東部に戸島の陸上地形を延長する形で200m×300mほどの平坦な台地地形が認められた。さらに海底台地は水深10m付近で広がっており、辺縁部から急激に水深が深くなることがわかった。重力式コアラーにより採取した海底表層試料と水中カメラ画像の観察結果から、台地は固い砂質堆積物と円礫が散在していた。一方、台地から外れた水深が深い地点では軟泥が厚く堆積していることがわかった。サブボトム・プロファイラ調査では海底下に埋没している人工物は認められなかった。サイドスキャンのモザイク図で認められた特異な画像パターンについて、潜水調査により海底表層環境を目視確認した。その結果、一部の特異な画像バターンは人工物(たこつぼ・ビニルシート)であることが確認できた。しかし、モザイク図、水中カメラ映像、サブボトム画像のいずれのデータにおいても井戸は確認できなかった。
海底の台地地形は旧海食台の可能性を示唆しており、下村(1980)は白鳳地震時の沈降によるものだと結論づけている。一方、井戸の目撃情報がある地点付近では、円礫が円環状に並べられた構造が確認できた。そのため、井戸と伝えられていたものはこの円礫群であった可能性がある。今後、海底台地表層の堆積物の年代分析などから、地震性沈降履歴を明らかにしていきたい。また、本発表では2019年3月に実施する浦ノ内湾の調査結果の速報も報告する。