日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS15] 活断層と古地震

2019年5月28日(火) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、大上 隆史(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、道家 涼介(神奈川県温泉地学研究所)、近藤 久雄(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[SSS15-P21] ステレオ等値線図による3次元SAR解析データの可視化-2016年熊本地震に伴う地震断層の高精度検出-

*粟田 泰夫1 (1.産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

キーワード:三次元SAR、ステレオ等値線図、2016年熊本地震、地震断層

測地技術の進歩は,地殻変動を数cmから数mまでの広いダイナミックレンジで面的に捉えることを可能にしている.とりわけ,衛星搭載の合成開口レーダ(SAR)による観測は,干渉解析(InSAR)および3次元解析による地震断層の高精細な検出を可能にし,従来の地表踏査による地震断層等の調査手法に大きな変革をもたらしつつある.ここでは,小林(2017)による2016年熊本地震に伴う地殻変動の3次元SAR解析データを用いて,広域の変動を精細かつ効率的に目視抽出するための可視化を試みた.

3次元SARデータの高解像度・高ダイナミックレンジ画像への可視化には,粟田(2017)によるステレオ等高線地形解析図による高解像度DEMの可視化手法を適用した.使用したデータは,東西・南北の水平2成分と上下成分の合計3成分に分割されたものであり、各成分のデータは位置情報と一つの変動値のみから構成される.それらの変動値をDEMの可視化における標高値と置き換えて,解析精度の限界まで表現する稠密な等値線図を作成した.精度が高い東西および上下成分の画像においては,データがもつ変動の解像度と同じ1cmまでの精細な間隔の等値線を実用的に描くことができた.また,複雑でダイナミックレンジの大きな地表変動の判読を容易にするために,微細なレンジを強調した段彩を施すとともに,画像を立体視が可能なアナグリフに加工した.なお,解像度が低い南北成分については,等高線間隔10-20cmの画像が実用限界であった.

 等値線間隔1cmの画像による判読では,変位量が大きな主断層帯(布田川・出ノ口および高木地震断層)およびそれらに伴う広域変動ととともに,その周辺の約50km四方に分布する多くの小規模な地震断層を検出することができた.このうち,小規模な地震断層の検出結果は,空間解像度が1桁高いとされるInSAR画像に基づいたFijiwara et al.(2016)の判読結果と概ね整合的であった.また,等値線図の判読および断面図での計測によれば,東西および南北成分の変位量が5cm程度までの断層については容易に抽出が可能であった.さらに,広域変動が小さかった熊本市街地においては変位量2cmまでのごく小規模な断層を目視判読することもできた.判読結果に基づいて実施した現地調査では,変位量5cm程度の断層については,ガードレールや縁石などの道路構造物や,家屋の基礎,コンクリート構造物などの変形や破断として断層の確認と変位量の計測が可能であった.

文献:
粟田泰夫(2017)活断層・古地震研究報告, 17, 117-136.
小林知勝(2017)2016年熊本地震被害調査報告書,地震被害調査シリーズ, 1, 28-34.
Fujiwara, S. et al.(2016)Earth, Planets and Space, 68:160.