[SSS17-P02] 地震波干渉法による霧島山のマグマ供給系の解明
キーワード:霧島山、地震波干渉法、脈動記録、異方性
2011年1月の霧島山新燃岳の噴火に際し、地殻変動の圧力源が新燃岳の北西5km、深さ約8kmの位置に検出され、噴火に関わるマグマだまりであると考えられている(Nakao et al., 2013)。地震波速度構造の推定によりマグマだまりの全体像をイメージングできれば、マグマ供給系に対して定量的な制約を与えられることが期待される。
本研究では、地震波干渉法により霧島山周辺の観測点間を伝播する表面波を用いて、マグマだまりの検出を試みた。地震波干渉法は脈動などのランダムな波動場の相互相関関数を計算することによって観測点間の地震波の伝播を抽出する手法である。相互相関関数は観測点間の速度構造に敏感であるため、地震波干渉法は局所的な構造推定に適している。
解析には、霧島山周辺の38観測点(東大地震研、京大火山研究センター、防災科研、気象庁)の3成分で記録された2011年4月〜2013年12月の脈動記録を用いた。脈動記録の上下動成分の相互相関関数を計算することにより観測点間を伝播するRayleigh波を、Transeverse成分の相互相関関数からLove波を抽出した。抽出された表面波の位相速度推定では、まず解析領域全体の平均的な1次元構造に対して分散曲線を測定し、次に各パスの位相速度を領域平均構造に対する速度異常として測定する、という2段階の手順を踏んだ。各パスの位相速度を用いて表面波位相速度トモグラフィーを行い(Rawlinson and Sambridge, 2005)、各グリッド点の位相速度から、S波速度構造(VSV, VSH構造)を線形化インバージョン(Tarantola and Valette, 1982)を用いて推定した。
浅部では、VSV, VSH構造ともに標高に沿った基盤の盛り上がりに対応する高速度異常が見られた。海抜下約7 km以深では、VSV構造で霧島山山体直下から北西にかけて水平方向に約15 kmにわたる大きな低速度体が見られたが、VSH構造ではこの低速度体は確認できなかった。2011年噴火に伴う地殻変動源はこの低速度体の北西上端に対応していることから、低速度体は噴火に関わるマグマだまりであると推定される。また、VSVとVSHは海抜下約2 km以深で一致しておらず(VSVの方が低速度)、radial anisotropyの存在が確認された。
霧島山の下では、本研究で求まったマグマだまりの南東下端に当たる海抜下10 kmからさらに深部(海抜下25 kmまで)の山体下で低周波地震が発生している。求まったマグマだまりと、深部低周波地震の震源と地殻変動源との位置関係から、マグマは山体の深部からマグマだまり内へ供給され、山体北西の地殻変動源の位置を出口として浅部へ上昇する、というマグマ供給系の描像が得られた。また、マグマだまり内のradial anisotropyは、部分溶融したメルトを含む薄い低速度層が多重に重なった構造によって説明できることから、マグマだまり内はシル状構造になっていると考えられる。
今後同様の手法を他の火山に適用し、マグマだまりやradial anisotropyの存在を系統的に調べることは、活動的火山のマグマ供給系を理解する上で重要だろう。
本研究では、地震波干渉法により霧島山周辺の観測点間を伝播する表面波を用いて、マグマだまりの検出を試みた。地震波干渉法は脈動などのランダムな波動場の相互相関関数を計算することによって観測点間の地震波の伝播を抽出する手法である。相互相関関数は観測点間の速度構造に敏感であるため、地震波干渉法は局所的な構造推定に適している。
解析には、霧島山周辺の38観測点(東大地震研、京大火山研究センター、防災科研、気象庁)の3成分で記録された2011年4月〜2013年12月の脈動記録を用いた。脈動記録の上下動成分の相互相関関数を計算することにより観測点間を伝播するRayleigh波を、Transeverse成分の相互相関関数からLove波を抽出した。抽出された表面波の位相速度推定では、まず解析領域全体の平均的な1次元構造に対して分散曲線を測定し、次に各パスの位相速度を領域平均構造に対する速度異常として測定する、という2段階の手順を踏んだ。各パスの位相速度を用いて表面波位相速度トモグラフィーを行い(Rawlinson and Sambridge, 2005)、各グリッド点の位相速度から、S波速度構造(VSV, VSH構造)を線形化インバージョン(Tarantola and Valette, 1982)を用いて推定した。
浅部では、VSV, VSH構造ともに標高に沿った基盤の盛り上がりに対応する高速度異常が見られた。海抜下約7 km以深では、VSV構造で霧島山山体直下から北西にかけて水平方向に約15 kmにわたる大きな低速度体が見られたが、VSH構造ではこの低速度体は確認できなかった。2011年噴火に伴う地殻変動源はこの低速度体の北西上端に対応していることから、低速度体は噴火に関わるマグマだまりであると推定される。また、VSVとVSHは海抜下約2 km以深で一致しておらず(VSVの方が低速度)、radial anisotropyの存在が確認された。
霧島山の下では、本研究で求まったマグマだまりの南東下端に当たる海抜下10 kmからさらに深部(海抜下25 kmまで)の山体下で低周波地震が発生している。求まったマグマだまりと、深部低周波地震の震源と地殻変動源との位置関係から、マグマは山体の深部からマグマだまり内へ供給され、山体北西の地殻変動源の位置を出口として浅部へ上昇する、というマグマ供給系の描像が得られた。また、マグマだまり内のradial anisotropyは、部分溶融したメルトを含む薄い低速度層が多重に重なった構造によって説明できることから、マグマだまり内はシル状構造になっていると考えられる。
今後同様の手法を他の火山に適用し、マグマだまりやradial anisotropyの存在を系統的に調べることは、活動的火山のマグマ供給系を理解する上で重要だろう。