日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT43] 地震観測・処理システム

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 宜浩(防災科学技術研究所)

[STT43-P02] 廉価な高密度強震観測ネットワークの実現に向けた試験観測

*赤澤 隆士1伊藤 貴盛2 (1.一般財団法人地域地盤環境研究所、2.株式会社aLab)

キーワード:強震観測、強震計

阪神・淡路大震災を引き起こした1995年兵庫県南部地震を機に,強震観測の必要性が再認識され,それ以降日本では世界に類を見ない高密度な強震観測網が急速に整備された。例えば,防災科学技術研究所 (現在の国立研究開発法人防災科学技術研究所) は,全国約1,000カ所に約20 km間隔で強震計を設置し,K-NET (Kyoshin Net;全国強震観測網) として運用を開始した。一方,関西地域では,関西地震観測研究協議会が1995年兵庫県南部地震発生の前年から独自の強震観測網を展開しており,K-NETと合わせて高密度な強震観測網が整備されている。しかし,これだけの観測密度を以てしても,地震による地面の揺れを詳細に把握するには限界がある。この課題の解決策の一つとして,強震観測点の数をさらに増強するという方法があるが,そのためには多額の費用を確保する必要があり,それが強震観測点数の増強を妨げる要因の一つとなっている。
 著者らは, IT強震計試作機相当の廉価なITKセンサを開発し,そのセンサをVPS (Virtual Private Server) とVPN (Virtual Private Network) を用いた廉価な地震計ネットワークの試験運用 (伊藤・他(2019)) の一環として利用する傍ら,既存の強震計と併設して強震計としての性能を評価するための試験観測を開始した。今回開発したITKセンサは,Raspberry Piにアナログデバイセズ社のMEMS加速度センサADXL355を接続することで,廉価 (部品代15,000円程度) にIT強震計試作機 (約60万円) 以上の機能を実現している。上述した試験運用中のネットワークは,このセンサを既設のLANにDHCPを利用して接続するだけで,観測データを予め用意したVPSに集約することが可能となっている (詳細は伊藤・他(2019)参照) 。一方,このセンサは,Raspberry Pi (今回はRaspberry Pi 3 Model B+) を観測データの収録に使用しており,16GBのUSBメモリを接続すれば,約8カ月分の観測データを収録することができる。時刻を較正する方法には,NTPサーバと同期する方法とGPSを利用する方法があり,後者を利用すれば,オフライン環境下でも,時刻を較正しつつ観測データを収録することが可能である。今後,試験観測を継続し,廉価な高密度強震観測ネットワークの実現に向けた検討を進めていく予定である。