日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT43] 地震観測・処理システム

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 宜浩(防災科学技術研究所)

[STT43-P03] 津波地震の規模推定への利用を想定した気象庁広帯域地震計・速度型強震計の長周期帯域のノイズレベルの比較

*田中 昌之1勝間田 明男1 (1.気象研究所)

キーワード:広帯域地震計、速度型強震計、パワースペクトル密度、ノイズレベル

津波地震(スロー地震)は, 同じ規模(地震モーメント)の通常の地震に比較して地震波の短周期成分の励起が低い現象である(Kanamori, 1972).その結果,気象庁マグニチュードMjや表面波マグニチュードMsなどの周期数秒~20秒の地震波の振幅から直接決められるマグニチュードがモーメントマグニチュード(Mw)よりも小さくなる.1992年ニカラグア地震(Ms7.2, Mw7.6)は,Mwが8未満であるのに破壊継続時間が100秒を超えており,津波地震と考えられている(例えば, Satake et al., 1993). このような地震は,発生メカニズム解析や地震の規模推定等において長周期の地震波に注目する必要があり,広帯域地震計による観測データはとても期待されている.国立研究開発法人防災科学技術研究所が運用する広帯域地震観測網(F-net)では,日本各地に広帯域地震計と速度型強震計を併設し,広帯域かつ広ダイナミックレンジの観測を可能としている.広帯域地震計は温度変化の影響を受けやすく,速度型強震計と一緒に奥行きのある横坑の最奥部に設置されている.先行研究では,国内で発生する津波地震に対して,F-netの速度型強震計を規模推定に活用できそうであることが分かった(例えば,田中・勝間田, 日本地震学会2017年度秋季大会, 田中・勝間田, JpGU Meeting 2018, 田中・勝間田, 日本地震学会2018年度秋季大会).気象庁も全国に併設ではないが広帯域地震計と速度型強震計を設置している.しかしながら,一部を除き,横坑内の設置ではないなど観測環境はF-netほど整っていない.そこで,気象庁とF-netの速度型強震計等の観測された連続波形記録からバックグランドのノイズレベルを調べる.McNamara and Buland (2004)等を参考に,時間窓を1日とし,半日ずつシフトさせながらそれぞれの期間におけるパワースペクトル密度を計算する.その結果から気象庁の広帯域地震計や速度型強震計が津波地震に使えるかを検討する.図1に一例として,気象庁の根室豊里観測点と近隣のF-netの根室観測点における,2019年1月1日00時00分から1時間の上下動成分の速度型強震計記録を使って解析したパワースペクトル密度を示す.ほぼ同じノイズレベルであり,設置環境の違いによる影響は当観測点については認められない.

謝辞
国立研究開発法人防災科学技術研究所の広帯域地震観測網F-netの波形データを使用させて頂きました。