日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT45] 合成開口レーダー

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:木下 陽平(筑波大学)、森下 遊(国土地理院)、小林 祥子(玉川大学)、阿部 隆博(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 地球観測研究センター)

[STT45-P08] 長野県小谷村におけるパイプ歪計観測データを用いたInSAR解析結果の評価

*清澤 友弥1佐藤 浩2 (1.日本大学大学院理工学研究科地理学専攻、2.日本大学文理学部)

キーワード:PALSAR-2、地すべり、InSAR

長野県小谷村を対象に、時系列のPALSAR-2データ(観測期間:2014年9月から2018年3月)を使用したInSAR画像を作成し、地すべり性地表変動の検出を試みた。50シーンを超えるInSAR画像を生成したが、その中で干渉性が高く、地すべり性地表変動の検出に利用できたのは4つの画像に過ぎなかった。すなわち、神城断層地震(平成26年11月22日、M6.7)の発生時の画像1つと発生後の画像3つである。画像判読の結果から、小谷村の阿原地区で、地震時と地震後に衛星視線方向に最大でそれぞれ約4.5㎝と約2.5 cm西へ移動する変動が検出された
阿原地区では長野県の地すべり対策事業によりパイプ歪計が設置されている。そこで、歪計のデータを使って画像から検出された変動を評価した。その結果、地表面から深度9mにあるすべり面で、地震時には西向きの変位を示唆する13μSTのひずみが観測された。経験的に、概ね20000μST(地中の変位量で2~3 cm)を超えると計測用電気ケーブルが断線するといわれている。つまり、13μSTは約0.0013 cmの変位に相当すると考えられる。このことから、歪計のデータによって、画像で検出された変動の発生自体が実証されるとともに変動の向きが調和的であった。ただし、画像で検出した変動量のほうが、歪計から計算された変動量よりも、2000倍大きいことがわかった。
地震後は、画像の観測期間が歪計の計測期間と一致していなかったので、地すべり性地表変動は移動土塊内で一様な速度で進行すると仮定し、日平均の変動速度で両者を比較した。画像で検出した変動速度は0.025-0.064cm/dayと計算され、ひずみ量58μSTからは変動速度が0.000083 cm/dayと計算された。画像で検出された変動速度のほうが、歪計から計算された変動速度よりも300~780倍速いことが分かった。この違いは、InSARはLoSに沿った変位を示し、歪計は、地中の変位を示すことに依存すると考えられる。また、地震後よりも地震時のほうが、両者の違いが大きい理由は、地震時の変動が地すべり性地表変動だけでなく地震の地殻変動を含んでいるためと考えられる。