日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC35] 火山防災の基礎と応用

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:宝田 晋治(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、吉本 充宏(山梨県富士山科学研究所)、石峯 康浩(鹿児島大学地震火山地域防災センター)、久保 智弘(防災科学技術研究所)

[SVC35-P06] 栗駒山昭和湖および大地獄谷登山道付近における硫化水素濃度の連続観測

*伊藤 英之1山本 泰道2大庭 憲二2辻 盛生1大場 武3 (1.岩手県立大学総合政策学部総合政策学科、2.株式会社ジェイエムエス、3.東海大学理学部)

キーワード:栗駒山、硫化水素ガス、連続観測、登山者対策

1.はじめに
 栗駒山は,岩手・宮城・秋田の3県境に位置し,1944年,1741年に水蒸気噴火を発生させた活火山である。1944年の噴火では,噴火と同時に磐井川沿いに酸性水が流下,内水面漁業や農業にも多大な被害を出した。

現在も昭和湖や大地獄谷で複数の噴気が確認され,特に大地獄谷は噴気帯に沿って登山道が設置されており,風向きによっては登山者の火山性ガスへの暴露が懸念される。さらに昭和湖付近は登山者の休憩場所にもなっており,早急な火山ガス対策が求められている。

我々は2018年6月6日から10月3日まで,大地獄谷沿いの登山道脇と昭和湖南東の2カ所にH2S自動測定装置を設置し,H2S濃度の時系列変化を測定した。


2.硫化水素ガスセンサーの概要
 環境H2SセンサーであるOdalog(http://www.jmsystem.co.jp/kazan/odalog.html)を上述した2カ所に設置した。このセンサーは0~200ppmまでのH2S濃度が測定可能であり,毎秒測定されるH2Sの大気濃度を,5分間平均濃度とし,3G回線を介して,サーバーに蓄積される。また,H2Sの瞬間最大濃度が設定値以上になると,観測者にSMSメッセージが送信される。あわせて風向風速計も設置した。風向風速計にはデータロガーを設置し,H2Sセンサー回収時にあわせてデータ回収を行った。

H2Sセンサー,風向風速計ともに,地上約1mの高さに設置した。観測は2018年6月6日から10月3日まで行ったが,2018年9月4日の台風21号により,センサーを固定していた木製ポールが2本とも破損し,実質の観測期間は90日であった。


3.観測結果
 昭和湖に設置したセンサーにおいては,気温とH2S濃度との間に明瞭な相関は認められないが,風速・風向とH2S濃度との間にはやや明瞭な相関が認められ、南西からの卓越風時と北風時に濃度が上昇する傾向が認められた。一方,大地獄谷付近の登山道沿いに設置したセンサーにおいても気温とH2S濃度との間に明瞭な相関が認められず,風向・風速と濃度との相関にも明瞭な関係は認められなかった。なお,期間を通しての平均濃度は,地獄谷センサーで0.71ppm,昭和湖センサーで9.05ppm,瞬間最大濃度は大地獄谷センサーにおいて,38ppm(2018年8月10日),昭和湖センサーにおいて334ppm(2018年8月19日)であった。


4.考察
昭和湖センサーにおいては,常に高濃度のH2Sが観測され,5分間平均濃度が100ppmを超える日も複数回観測された。大地獄谷沿いの登山道脇でも5分間平均濃度が10ppmを超える日が複数観測され,登山者に対する早急な火山ガス対策を講じる必要がある。