日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC37] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2019年5月30日(木) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)

[SVC37-P05] 大室山での全方位ミュオグラフィに向けたシミュレーションとテスト観測

*長原 翔伍1宮本 成悟1森島 邦博2中野 敏行2小山 真人3鈴木 雄介4 (1.東京大学地震研究所、2.名古屋大学、3.静岡大学、4.伊豆半島ジオパーク推進協議会事務局)

キーワード:火山、3次元、宇宙線、ミューオン

火山の噴火現象の理解において,火口近くの火道の大きさと形状は重要である.火道の大きさは数m~数百m程度であり,実際の火道は単純な円柱ではないと考えられているため,一番大きな数百mの火道を想定した場合,数十m程度の空間分解能があれば火道の形状を3次元的に明らかにすることができる.

 これに対し,数m~数十m程度の高い空間分解能で2次元透視画像を得ることに成功している技術が「ミュオグラフィ」である.近年では,これを複数方向から実施することで3次元密度構造を推定した例もあるが,これらは観測点数が少なく,数百m単位の密度コントラストしか捉えられなかった.これを20m程度の空間分解能で3次元密度構造推定を行う新たな手法として,我々は10点以上の観測点を用い,観測対象を全方位から観測する「全方位ミュオグラフィ」の観測計画を進めている.

この全方位ミュオグラフィの実証観測のターゲットとしているのが,静岡県伊東市の大室山である.大室山をターゲットとした理由は2つある.1つは,大室山は一度の噴火で形成されたスコリア丘であり,単純な構造が期待され、意味のある結果が得やすいことである.2つ目は,周囲に宇宙線ミュオンを遮蔽するような地形がなく,アクセスも容易であることである.また,これまでの火山に対するミュオグラフィは溶岩ドームや複成火山のみで,スコリア丘でミュオグラフィを実施すれば世界初の事例となる.

 全方位ミュオグラフィ観測に先立ち,シミュレーションによる実現可能性評価とテスト観測を行った.シミュレーションにはFiltered Back projection法を応用した手法を用いた.その結果,各観測点で観測されるミュオン数で最低限のS/N比を確保する必要があることがわかった.テスト観測は大室山の100m単位の大まかな構造を把握する目的で行い,3方向から観測した.その結果,クレーターリム部分に高密度部分があることがわかった.これは古谷野他 (1996) に記述されている,噴火の最終段階でクレーター内に溶岩湖が形成されたことと関連している可能性が考えられる.

 本発表では,全方位ミュオグラフィの概要と大室山でのシミュレーション結果,テスト観測から得られてた大室山の密度構造,及びそれらを踏まえた今後の観測計画について報告する.