日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC38] 活動的火山

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC38-P10] 水位変動・地震観測に基づく立山カルデラ新湯の地下構造の推定

*川口 亮平1齋藤 直子2鬼澤 真也1 (1.気象研究所、2.気象庁富山地方気象台)

キーワード:新湯、立山カルデラ、間欠泉

立山カルデラの新湯は火山活動によって形成された直径約40 m,深さ約5.6 mの火口湖である.河川からの流入はなく,湖底の噴出口から湯水が噴出することで水位を維持しており,あふれた湯水は北にある湯川へ流出している.新湯は数十年前から満水の状態を維持していたが,2014年以降,数日から20日程度の周期で干上がりと満水の状態を繰り返す間欠泉活動を行うようになったことが報告されている(福井ほか,2018).新湯の水位変動活動を調査するため2017,2018年の6月から10月にかけて新湯の湖岸周辺に水位計と地震計およびタイムラプスカメラを設置して観測を行った.本研究では,観測で得られた水位変動に関する時間の規則性から新湯の地下状態の推定を試みたので報告する.

 新湯の水位変動は気泡式の水位計によって10分の測定間隔で観測した.水位変動に伴う新湯湖面の表面現象の変化をタイムラプスカメラによって観測した.また,新湯の湖岸から約20 m離れた場所に地震計を設置し,100 Hzのサンプリング周期で水位変動現象に伴う震動現象を観測した.

 観測期間中に2017年は7サイクル,2018年は8サイクル分の干上がりから満水になる水位変動をそれぞれ観測できた.まず,水位変動の期間を干上がり,水位上昇,満水,水位下降の4つに分け,それぞれにかかる時間を調べた.その結果,干上がりは約3日間,水位上昇は約4.5日間,満水は0~20日間,水位下降は約0.5日間であった.満水を継続した期間は幅があったものの,水位の上昇と下降にかかる時間はほぼ一定で規則的であった.

 水位変動に伴う湖面の状態を調べたところ,水位上昇・満水の期間に上昇している湯水は気泡を伴って噴出していた.また,地震動の振幅も水位上昇・満水の期間と水位下降・干上がりの期間では大きく異なっていた.これらのことから新湯の地下には湯溜まりがあり,湯溜りの湯水が沸騰して新湯へ噴出することによって間欠泉活動が起きていると考えられる.
 新湯と地下の湯溜りの間の湯水の流路を半径一定の円筒と仮定して,水位下降の時間から大きさの推定を試みた.新湯の形状を円錐,水位下降期間の新湯地下へ流出する湯水の流量を一定と仮定した場合,新湯の大きさと水位下降にかかる時間から流量は約0.06 m3/sと見積もられる.また,水位計で得られた水位下降期間における湖底の噴出口より下の場所での水位下降速度は1.2-2.5×10-3 m/sであった.これらの値から,新湯直下の湯水の管路の半径は2.8-4.0 mと推定される.発表では,既存の間欠泉モデルと推定された新湯地下の形状を用いて,水位の上昇下降の時間スケールを比較した結果についても報告する.