日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC38] 活動的火山

2019年5月27日(月) 17:15 〜 18:30 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:前田 裕太(名古屋大学)、三輪 学央(防災科学技術研究所)、西村 太志(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)

[SVC38-P43] 口永良部島火山2018-19年噴火降下火砕物の産状と分布

*長井 雅史1中川 正二郎2入山 宙1三輪 学央1棚田 俊收1上田 英樹1中田 節也1 (1.防災科学技術研究所 火山防災研究部門、2.屋久島地学同好会)

キーワード:テフラ、水蒸気噴火、水蒸気マグマ噴火、噴煙柱、琉球弧

口永良部島火山新岳では2018年10月21日から断続的に噴火が始まった。東側に隣接する屋久島や種子島で降灰が認められるような比較的大きな噴火は2018年12月18日、12月28日、2019年1月17日、1月29日に発生した。このうち降灰軸が南東方向にあり陸上に降灰が少なかった12月28日噴火を除く3つの噴火について降灰調査を行った。口永良部島島内では2月上旬に調査を行った。また、気象庁口永良部島火山防災連絡事務所提供資料や地元住民等への聞き取り情報も利用した。

屋久島や種子島において堆積物はいずれも明灰色ないし淡く赤みを帯びた明灰色の砂質~シルト質火山灰層で、構成粒子は石質岩片や熱水変質岩片を主体とし新鮮なガラス質岩片は少ない。一連の噴火で最も降灰量が多かった1月17日噴火では、東に伸びる降灰軸上の屋久島北西部で400g/m2程度、北東部で100 g/m2程度、種子島南端部で20 g/m2程度の堆積物が認められた。堆積物の一部は泥雨として降下した痕跡を持っていた。屋久島北部では細粒火山礫も多く含まれており、最大粒径は降灰軸よりも北側で大きい傾向があった。降灰軸と最大粒径分布の軸のずれは高度によって風向や風速が異なっていたことで説明されうる。口永良部島島内では一連の噴火全体の堆積物として火口から南東方向に降灰軸があり、約1.5kmの距離で約12kg/m2の堆積量が確認された。このうち1月17日噴火に相当する層準は粗粒な砂礫質で長径5cm程度の火山礫を含む。

降下火砕物の噴出量は堆積密度を1000kg/m3としてFierstein and Nathenson (1992)の方法により求めた。屋久島などの遠方の堆積量分布データからは2018年12月18日噴火では約2.9万t、1月17日噴火では6.2万t、1月29日噴火では1.4万tと見積もられる。いずれも同様な方法で見積もった2015年5月29日噴火の降下火砕物の噴出量(約12万t)より小さい。これらの遠方データに近傍地域である口永良部島内の堆積量を加味した場合、2018年12月~2019年1月の降下火砕物の合計は約13万t程度と見積もられる。