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[G01-01] 高等学校地理総合!:防災教育の強い追い風
キーワード:地理総合、防災教育、新学習指導要領
2022年から高等学校の地理歴史科で新科目「地理総合」が実施される。「地理総合」は防災教育推進の強力な追い風となる可能性がある。なぜなら
1)「地理総合」はほとんどの高校生が履修する必修科目である。
2)災害に関する学習が大きな柱となっている。
からである。
国や県の関係機関や部署,防災教育に関わる研究者,NPO法人,ジオパーク関係者など,地域の防災関係者は,高校側と連絡を取り,協議をするなどの十分な準備をする必要がある。そうすれば,この追い風を生かして防災教育の普及に大きく貢献できる可能性がある。
「地理総合」は必修科目:高等学校「地理総合」は,2022年から実施される地理歴史科の中に設けられた標準単位数2単位の必修科目である。2018年に公表された学習指導要領で示され,現在教科書作成作業が進行中である。試行を経て2022年から高校生のほとんど全員が履修することになる。昭和末の時期から,地理科目は選択科目として履修されてきたが,今回の改定で地理科目の比重が大きく増したことになる。
災害に関する学習が大きな柱:地理総合の内容は大きく3つ-「地図や地理情報システムで捉える現代世界」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」-に分けられる。3つめの「持続可能な地域づくりと私たち」は,さらに「自然環境と防災」「生活圏の調査と地域の展望」に区分される。「自然環境と防災」では,課題探究活動を行い,自然災害への備えや対応について知識を身につけ,ハザードマップや新旧地形図を読み取りまとめる技能を身につけることになっている。すなわち,大きく分けられた3分野のうち半分が自然災害に関する学習となる。
教材や授業者の不足と防災機関の役割:しかしながら,新科目「地理総合」の自然災害部分の授業を行うための十分な資源はあまり高校にあるようには見えない。高校から伝わってくる話は「地理総合」必修化へのとまどいであり,教材や授業者の不足である。「地理総合」実施のために必要な教育素材は,様々な災害の知識,地域の災害に関する知識,ハザードマップなどの学習素材,探究的学習の素材,災害体験者などの人的資源である。また,防災関係者は授業者としても「地理総合」に関わることができる。いずれも,防災関係機関が高校側に提供可能なものである。
「地理総合」実施のために必要な教材:現状ではまだ「地理総合」の教科書は作成されていない。2018年に示された学習指導要領に基づき,どんな教材が必要か考える。大きく二つの分野にわたる教材が必要である。
1)地域の災害に関する資料:過去にその地域で起こった自然災害と,災害に対する備えに関する資料が必要である。過去にの自然災害については,その規模や頻度について学ぶことになっているが,歴史災害に関する詳細な資料が歓迎されるだろう。また,ハザードマップや新旧地形図は必須の学習素材であり,防災関係機関からの提供が必要である。また,地震,津波,風水害,火山災害についていずれかをとりあげて学習することになる。近い過去の災害に関しては体験者の証言の教育効果が大きい。
2)災害に関する探究的な学習は「地域性を踏まえた防災について,自然及び社会的条件との関わり,地域の共通点や差異,持続可能な地域づくりなどに着目して,主題を設定し,自然災害への備えや対応などを多面的・多角的に考察し,表現すること。」となっている。防災関係機関は探求の基礎になる資料を提供可能であるし,防災関係機関そのものも探求的学習の素材である。
このように2022年から高等学校の地理歴史科で開設される新科目「地理総合」は防災教育推進の強力な追い風となる可能性が高く,防災関係者はこの授業の実施に大きく関わることができる。
防災関係者にとってのメリット:「地理総合」は防災教育の普及の他に,防災関係者にとって大きなメリットがある。高等学校の地理歴史科では,その全体を通じて「地理や歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養う」となっている。したがって,災害に関する探究的な学習を通じて主体的に防災に関わる人材を育てることも教科の目的ということができる。「地理総合」への支援は防災関係者の後継者の育成という意味でも重要である。
1)「地理総合」はほとんどの高校生が履修する必修科目である。
2)災害に関する学習が大きな柱となっている。
からである。
国や県の関係機関や部署,防災教育に関わる研究者,NPO法人,ジオパーク関係者など,地域の防災関係者は,高校側と連絡を取り,協議をするなどの十分な準備をする必要がある。そうすれば,この追い風を生かして防災教育の普及に大きく貢献できる可能性がある。
「地理総合」は必修科目:高等学校「地理総合」は,2022年から実施される地理歴史科の中に設けられた標準単位数2単位の必修科目である。2018年に公表された学習指導要領で示され,現在教科書作成作業が進行中である。試行を経て2022年から高校生のほとんど全員が履修することになる。昭和末の時期から,地理科目は選択科目として履修されてきたが,今回の改定で地理科目の比重が大きく増したことになる。
災害に関する学習が大きな柱:地理総合の内容は大きく3つ-「地図や地理情報システムで捉える現代世界」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」-に分けられる。3つめの「持続可能な地域づくりと私たち」は,さらに「自然環境と防災」「生活圏の調査と地域の展望」に区分される。「自然環境と防災」では,課題探究活動を行い,自然災害への備えや対応について知識を身につけ,ハザードマップや新旧地形図を読み取りまとめる技能を身につけることになっている。すなわち,大きく分けられた3分野のうち半分が自然災害に関する学習となる。
教材や授業者の不足と防災機関の役割:しかしながら,新科目「地理総合」の自然災害部分の授業を行うための十分な資源はあまり高校にあるようには見えない。高校から伝わってくる話は「地理総合」必修化へのとまどいであり,教材や授業者の不足である。「地理総合」実施のために必要な教育素材は,様々な災害の知識,地域の災害に関する知識,ハザードマップなどの学習素材,探究的学習の素材,災害体験者などの人的資源である。また,防災関係者は授業者としても「地理総合」に関わることができる。いずれも,防災関係機関が高校側に提供可能なものである。
「地理総合」実施のために必要な教材:現状ではまだ「地理総合」の教科書は作成されていない。2018年に示された学習指導要領に基づき,どんな教材が必要か考える。大きく二つの分野にわたる教材が必要である。
1)地域の災害に関する資料:過去にその地域で起こった自然災害と,災害に対する備えに関する資料が必要である。過去にの自然災害については,その規模や頻度について学ぶことになっているが,歴史災害に関する詳細な資料が歓迎されるだろう。また,ハザードマップや新旧地形図は必須の学習素材であり,防災関係機関からの提供が必要である。また,地震,津波,風水害,火山災害についていずれかをとりあげて学習することになる。近い過去の災害に関しては体験者の証言の教育効果が大きい。
2)災害に関する探究的な学習は「地域性を踏まえた防災について,自然及び社会的条件との関わり,地域の共通点や差異,持続可能な地域づくりなどに着目して,主題を設定し,自然災害への備えや対応などを多面的・多角的に考察し,表現すること。」となっている。防災関係機関は探求の基礎になる資料を提供可能であるし,防災関係機関そのものも探求的学習の素材である。
このように2022年から高等学校の地理歴史科で開設される新科目「地理総合」は防災教育推進の強力な追い風となる可能性が高く,防災関係者はこの授業の実施に大きく関わることができる。
防災関係者にとってのメリット:「地理総合」は防災教育の普及の他に,防災関係者にとって大きなメリットがある。高等学校の地理歴史科では,その全体を通じて「地理や歴史に関わる諸事象について,よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に解決しようとする態度を養う」となっている。したがって,災害に関する探究的な学習を通じて主体的に防災に関わる人材を育てることも教科の目的ということができる。「地理総合」への支援は防災関係者の後継者の育成という意味でも重要である。