日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 104 (1F)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

11:00 〜 11:15

[G01-02] 原発に近い九州大学の全学教員による熊本地震以降の学生の身を守り方を教える総合防災の取組み

*杉本 めぐみ1,2Peppoloni Silvia2 (1.九州大学、2.国際地球科学倫理協会)

キーワード:大学の危機管理、緊急防護措置を準備する区域 (UPZ)、地球科学倫理、専門化、学生のための防災教育、原発避難

2016年熊本地震をきっかけに九州大学では2017年講義「九州の防災ー熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」を開始した。学生からの要望に文理融合の全学教員と九州大学病院医師の計15名がオムニバス形式で総合防災の講義を一から作り始めものである。おもに全学の1年生向けの基幹教育である。九州大学は旧九州芸術工科大学と合併したことから芸術科の教員も少なからずおり、工芸デザイナーと彫刻家による芸術による復興支援や熊本県にある阿蘇山の草原を守るための基礎研究などの講義もある。防災の基礎となるハザード別の科学的基礎知識や医学情報に留まらない。共同通信が本講のことを「一見防災に関連のなさそうな学問の話が印象的だ。私たちの社会は実に多様な知的活動の蓄積に日々支えられているのだ」と評する知的豊かさと地球科学倫理に1年生が触れる講義構成となるように腐心している。
 2004年インド洋津波以後に著者がインドネシア政府の要請で理科における防災教育の評価を行った折に、内陸部のバンドン工科大学近辺の学校の教員からは政府の依頼の津波防災よりもむしろ、火山噴火など地元で起こるハザードの防災教育の要望が高かった。高度な専門に特化した1つのハザードだけでなく、それぞれの地域と風土に合った幅広い防災教育プログラムを幅広くハザードを理解した専門家と共に創って行くことが求められていることを実感した。そこで著者が作った英語の災害ハンドブックは以下URLより誰もがダウンロードできる(http://www.unesco-school.mext.go.jp/muzfaw70p-230/)。学生には最低限のハザード別の防災知識を持つように工夫している。
 他方で九州大学は再稼働している佐賀県の玄海原発から32kmにUPZから2Km風下に位置している。シビアアクシデントのリスク下の厳しい環境にあることも踏まえた防災教育にチャレンジしているところである。その取り組みを紹介する。