11:45 〜 12:00
[G01-05] 南海トラフ地震に備えるための地震リスクと不確実性:防災教育の在り方を問う
キーワード:防災教育、南海トラフ地震、不確実性、予測、シナリオ型ワークショップ
これからの防災教育の在り方を考える上で、過去の災害の経験を伝承すること以外に、私たちがこれまで経験したことのないような災害にどう対応していくのか、そのために日頃の学習を通じてどのように学びより良い防災に向けて実践していくのかを検討することが喫緊の課題として位置づけられる。そのような災害の可能性の一つに、南海トラフ地震があげられる。「いつ」、「どこで」、「どのように」起きるかを含め、多様なレベルで不確実な要素を含みながら甚大な被害が予想される災害において、科学の実際、それに伴う様々な不確実性をどのように市民や多様な関係者(以下、ステークホルダー)に日常的に伝え、それを日頃の防災の実践に活かしていのか今、より多くの関係者が一体となって検討する必要に迫られている。
このような課題は一部の自然科学者のみならず,社会科学者・政策関係者・緊急事態関係者・地方自治体・市民・企業といった多様なステークホルダーが,協働で向き合う必要のある総合的防災教育の課題である。特に南海トラフ地震に備えて協働で検討すべき課題は、1)「入手可能な情報を基に、どのようにマルチステークホルダーが行動すべきかを考える方向に導くか、そのためにはどのように伝えればよいか」、さらに2)その伝達⇔学習のプロセスの中で得られる成果を「どのようにより良い防災対策に組み入れることができるか」であろう。
こうしたことを問題意識に持ち,京都大学を中心とする有志の研究グループは,自然科学者と社会科学者が協働し,地震リスクの不確実性に関わる実際を如何に社会に伝え,それを社会にどのように反映させていくかに焦点当て,本課題へのより良い取り組み方を追求してきた。口頭発表では、本研究グループがこれまでに実施した,教育関係者,企業関係者、自主防災組織それぞれのステークホルダーを対象としたワークショップ(2017年3月,6月、2018年3月)、さらにそれらのマルチステークホルダーが一同に会したワークショップ(2019年1月に実施)のポイントを集約して、その結果、さらにそこから引き出されるこれからの総合防災教育の在り方に対する提案を行う。
上記ワークショップの特徴として、地震リスクと不確実性に関わる学習を最適化するために1)協働対話型の手法をとったこと、2)シナリオベースの学習を通して、その場で問題を「自分事化」してもらうプロセスを創出する仕組みをつくったことなどが挙げられる。特に、①自然科学と社会科学の研究者が対話手法で本テーマに関わる科学の実際と不確実性を紹介し、②南海トラフ地震のシナリオを提示し,実際のシナリオを経験することを通して参加者にその場で学習してもらうこと,③参加対象者(市民、教育関係者、企業、自主防災組織関係者など)と科学者・政策関係者・行政関係者などが同じテーブルに着き,双方の本音の対話を促進することを重視した。そうしたワークショップ実施の成果の一部を次のように挙げることができる。
〇異なるステークホルダー同士の対話を通して,それぞれのステークホルダーがすべきことが浮き彫りになった.
〇普段接点を持たない科学者と参加者または政策関係者が,同じテーブルで本音を話すことにより,相手を知るきっかけになるとともに,悩みや問題意識を共有するプロセスに繋がった.
〇参加者の「不確実性」に対する理解がワークショップの中で格段に向上,学習効果が明らかに見られた.ワークショップの最後には,問題が自分事になり,各自が何をすべきかについて問題意識をもつようになった.その中で普段の防災対策を見直すきっかけにも繋がった.
〇企業向けのワークショップを例に挙げると,各テーブルにおける対話とワークの総まとめとして,次のような集合知が引き出された.
・確率が小さくても(不確実性が大きくとも)地震リスクの変化について,ありのままの情報提供がほしい.そのためには,情報を受け取る側のリテラシーの向上も同時に必要になる.
・実際のシナリオを考えたとき,SNSや様々な情報ソースからの情報が氾濫することが予想されることから,正式な機関からの情報提供が欠かせない.
・実際のケースを考えると,企業側もBCP(事業継続計画)だけでなく,普段からどのように防災「マネジメント」を実施するかを検討する必要がある.さらに復旧だけでなく,復興について検討する必要がある.
上記を踏むワークショップの実践を踏まえ、本報告では、従来型ではない学習方法のデザインの在り方、日本社会が直面する今後の大規模災害を見通した総合的防災教育の在り方について提言を行う。
このような課題は一部の自然科学者のみならず,社会科学者・政策関係者・緊急事態関係者・地方自治体・市民・企業といった多様なステークホルダーが,協働で向き合う必要のある総合的防災教育の課題である。特に南海トラフ地震に備えて協働で検討すべき課題は、1)「入手可能な情報を基に、どのようにマルチステークホルダーが行動すべきかを考える方向に導くか、そのためにはどのように伝えればよいか」、さらに2)その伝達⇔学習のプロセスの中で得られる成果を「どのようにより良い防災対策に組み入れることができるか」であろう。
こうしたことを問題意識に持ち,京都大学を中心とする有志の研究グループは,自然科学者と社会科学者が協働し,地震リスクの不確実性に関わる実際を如何に社会に伝え,それを社会にどのように反映させていくかに焦点当て,本課題へのより良い取り組み方を追求してきた。口頭発表では、本研究グループがこれまでに実施した,教育関係者,企業関係者、自主防災組織それぞれのステークホルダーを対象としたワークショップ(2017年3月,6月、2018年3月)、さらにそれらのマルチステークホルダーが一同に会したワークショップ(2019年1月に実施)のポイントを集約して、その結果、さらにそこから引き出されるこれからの総合防災教育の在り方に対する提案を行う。
上記ワークショップの特徴として、地震リスクと不確実性に関わる学習を最適化するために1)協働対話型の手法をとったこと、2)シナリオベースの学習を通して、その場で問題を「自分事化」してもらうプロセスを創出する仕組みをつくったことなどが挙げられる。特に、①自然科学と社会科学の研究者が対話手法で本テーマに関わる科学の実際と不確実性を紹介し、②南海トラフ地震のシナリオを提示し,実際のシナリオを経験することを通して参加者にその場で学習してもらうこと,③参加対象者(市民、教育関係者、企業、自主防災組織関係者など)と科学者・政策関係者・行政関係者などが同じテーブルに着き,双方の本音の対話を促進することを重視した。そうしたワークショップ実施の成果の一部を次のように挙げることができる。
〇異なるステークホルダー同士の対話を通して,それぞれのステークホルダーがすべきことが浮き彫りになった.
〇普段接点を持たない科学者と参加者または政策関係者が,同じテーブルで本音を話すことにより,相手を知るきっかけになるとともに,悩みや問題意識を共有するプロセスに繋がった.
〇参加者の「不確実性」に対する理解がワークショップの中で格段に向上,学習効果が明らかに見られた.ワークショップの最後には,問題が自分事になり,各自が何をすべきかについて問題意識をもつようになった.その中で普段の防災対策を見直すきっかけにも繋がった.
〇企業向けのワークショップを例に挙げると,各テーブルにおける対話とワークの総まとめとして,次のような集合知が引き出された.
・確率が小さくても(不確実性が大きくとも)地震リスクの変化について,ありのままの情報提供がほしい.そのためには,情報を受け取る側のリテラシーの向上も同時に必要になる.
・実際のシナリオを考えたとき,SNSや様々な情報ソースからの情報が氾濫することが予想されることから,正式な機関からの情報提供が欠かせない.
・実際のケースを考えると,企業側もBCP(事業継続計画)だけでなく,普段からどのように防災「マネジメント」を実施するかを検討する必要がある.さらに復旧だけでなく,復興について検討する必要がある.
上記を踏むワークショップの実践を踏まえ、本報告では、従来型ではない学習方法のデザインの在り方、日本社会が直面する今後の大規模災害を見通した総合的防災教育の在り方について提言を行う。