日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-01] 災害を乗り越えるための「総合的防災教育」

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 104 (1F)

コンビーナ:中井 仁(小淵沢総合研究施設)、小森 次郎(帝京平成大学)、林 信太郎(秋田大学大学院教育学研究科)、座長:小森 次郎(帝京平成大学)

12:00 〜 12:15

[G01-06] 地域防災と戸別の避難カード作りの取り組み

★招待講演

*鈴木 茂之1 (1.岡山大学)

キーワード:地域防災、戸別の避難カード、自然災害

地震災害、火山災害、風水害など身の回りの災害は多様であるうえ、その場所の気候状況、地理環境、地質条件によって想定される危険度もさまざまである。数メートルの違いで被害の明暗を分けることがあり、戸別に防災対策を考えていく必要がある。「戸別の避難カード」作りの取り組みは平成27年度と28年度に内閣府防災担当の事業でなされた。これは自治会が応募し、所属する町、県と内閣府とともに実施したもので、平成27年度に岡山県美咲町川北自治会が取り組んだ例を紹介する。

 川北地区は旧旭町の吉備高原地域にある。東西約2km、南北約3kmの小さい範囲ながら、高位の吉備高原地形をなす小起伏地と、その吉備高原地形を深く侵食する谷沿いの新しい急傾斜地からなる。谷部の地区の急傾斜地は落石、斜面崩壊、地すべり、出水などの、川沿いは越流や土石流の危険があり、そのリスクは戸別に異なる。一方高位の小起伏地は安全な地区である。1年間をかけて、事前打ち合わせ→専門家を交えての危険個所の検討→住民による「まち歩き」で想定される災害を確認→戸別に「避難カード」を作成→その成果をもとにした避難訓練が行われた。避難訓練では要支援者の援助や、より安全な地区からの支援体制も盛り込まれた。岡山県では29年度以降この取り組みを県の事業として引き継いでいる。

 住民が主体的に進める地域防災は、必ずしも自治会がイニシアティブをとる形態になる必要はないであろう。自主防災組織や公民館からの呼びかけで取り組みが始まることも想定される。文科省は東日本大震災をきっかけに学校安全総合支援事業を各県と政令指定都市に委託している。対象が津波に始まり、自然災害から交通や社会的な危険にまで広げられてきている。避難訓練だけでなく、児童生徒が自分自身で身を守る能力をたかめるような授業も増えつつある。さらに昨年度からは地域との連携が模索されるようになった。そのため岡山県と岡山市では、モデル校での実践委員会には学校幼稚園、教育委員会、PTA、自治体防災担当部署、自治会、自主防災組織、民生委員、大学・気象台などの防災専門機関、その他から参加しており、学校・地域・行政の連携を作るきっかけが出来始めてきた。この取り組みの中で、生徒によって学区や通学路の危険個所を探して防災マップを作成することが定着してきており、将来生徒の家庭ごとに非難カードが出来ることが期待される。
 災害の種類やリスクの大きさは戸別に異なるため、戸別に避難カードなどの防災対策が必要である。その作成のためには自治会などのコミュニティーでの共助が重要であろう。地域防災の取り組みをどこが声をあげるかはいろいろな可能性がありそうである。