14:00 〜 14:15
[G03-07] 最近の地震に関するスライド教材の試作 (2) -2019年1月3日熊本地方の地震(M5.1)の例と前試作からの改良-
キーワード:teachable moment、2019年1月3日熊本地方の地震
理科教材として時事的なものを扱うことがある。これは、授業内容と世間で話題になっていることとのつながりを学生に知ってもらうことで、授業内容に関心を持ってもらい、理解を深めてもらうことを目的としている。
アメリカの Incorporated Research Institutes for Seismology (IRIS)が、最近の地震についてteachable momentのスライド教材を公開している。Teachable moments とは、「教える好機」と訳すことができる。しばしば私の講義でこのスライド教材を利用している。しかし、日本で発生した地震のうち、日本で大きく報道される地震でも、IRISのスライド教材が作られないことがある。そこで日本版のスライド教材を開発することにした。IRIS 版の作成方針を基に日本版の作成方針を検討し、以下の通りとした。
・ 日本で地学を学ぶ高校生や大学生を対象とする
・ 日本で発生した、新聞 1 面に掲載されそうな地震を取り上げる
・ スライドの分量は、10 分前後で説明できるぐらいにする
・ 掲載情報は、地震の震源、マグニチュード、震度分布、被害の概要、面的な推定震度分布と震度遭遇人口、テクトニックな背景と過去の地震活動、震源メカニズム解、余震分布、地震波形、地震の特徴に応じた情報、とする
・ 地震発生から 12 時間以内の公開を目標にする
・ 作成時間は 1~2 時間程度とし、そのためあらかじめ 8~9 割雛形を決めておく
・ 教室でそのまま使え、カスタマイズ可能にする
・ 多くの人がアクセス可能な情報のみにし、出典を明記する
・ 個人の見解を控え、多くの地震学者が同意しそうな内容とする
以上の作成方針に基づき、2018 年北海道胆振東部地震について、試作を行い、暫定的なウェブページで公開した ( http://reijikan.my.coocan.jp/RETMJ/retmj-index.html ) (小林, 2018a, b)。小林 (2018b) では今後の検討課題としては、作成方針や掲載情報の継続的な見直し、作成体制の強化、を挙げた。
2019年1月4日熊本地方の地震 (M5.1) が発生し、最大震度6弱を記録した。この地震についても試作を行った。最初の試作から、断層面の幾何の表現を変更し、またおおよそのスケールが分かるようにした。また、防災科学技術研究所 Hi-net で提供されている地震波伝播のアニメーションも掲載することにした。
このような教材開発は、他の自然現象、例えば火山噴火等、へ応用されることも期待される。また、これによって、地学を学ぶ生徒・学生が増えることを期待する。
参考文献
小林励司 (2018a): 最近の地震に関するスライド教材の試作-2018年9月6日北海道胆振地方中東部の地震を例に-, 日本地震学会2018年秋季大会, S25-P27. (緊急セッション「S25. 2018 年 9 月 6 日北海道胆振地方中東部の地震」のため要旨なし)
小林励司 (2018b): 日本で発生した最近の地震に関するスライド教材の開発, 鹿児島大学理学部紀要, 51, 43-51.
アメリカの Incorporated Research Institutes for Seismology (IRIS)が、最近の地震についてteachable momentのスライド教材を公開している。Teachable moments とは、「教える好機」と訳すことができる。しばしば私の講義でこのスライド教材を利用している。しかし、日本で発生した地震のうち、日本で大きく報道される地震でも、IRISのスライド教材が作られないことがある。そこで日本版のスライド教材を開発することにした。IRIS 版の作成方針を基に日本版の作成方針を検討し、以下の通りとした。
・ 日本で地学を学ぶ高校生や大学生を対象とする
・ 日本で発生した、新聞 1 面に掲載されそうな地震を取り上げる
・ スライドの分量は、10 分前後で説明できるぐらいにする
・ 掲載情報は、地震の震源、マグニチュード、震度分布、被害の概要、面的な推定震度分布と震度遭遇人口、テクトニックな背景と過去の地震活動、震源メカニズム解、余震分布、地震波形、地震の特徴に応じた情報、とする
・ 地震発生から 12 時間以内の公開を目標にする
・ 作成時間は 1~2 時間程度とし、そのためあらかじめ 8~9 割雛形を決めておく
・ 教室でそのまま使え、カスタマイズ可能にする
・ 多くの人がアクセス可能な情報のみにし、出典を明記する
・ 個人の見解を控え、多くの地震学者が同意しそうな内容とする
以上の作成方針に基づき、2018 年北海道胆振東部地震について、試作を行い、暫定的なウェブページで公開した ( http://reijikan.my.coocan.jp/RETMJ/retmj-index.html ) (小林, 2018a, b)。小林 (2018b) では今後の検討課題としては、作成方針や掲載情報の継続的な見直し、作成体制の強化、を挙げた。
2019年1月4日熊本地方の地震 (M5.1) が発生し、最大震度6弱を記録した。この地震についても試作を行った。最初の試作から、断層面の幾何の表現を変更し、またおおよそのスケールが分かるようにした。また、防災科学技術研究所 Hi-net で提供されている地震波伝播のアニメーションも掲載することにした。
このような教材開発は、他の自然現象、例えば火山噴火等、へ応用されることも期待される。また、これによって、地学を学ぶ生徒・学生が増えることを期待する。
参考文献
小林励司 (2018a): 最近の地震に関するスライド教材の試作-2018年9月6日北海道胆振地方中東部の地震を例に-, 日本地震学会2018年秋季大会, S25-P27. (緊急セッション「S25. 2018 年 9 月 6 日北海道胆振地方中東部の地震」のため要旨なし)
小林励司 (2018b): 日本で発生した最近の地震に関するスライド教材の開発, 鹿児島大学理学部紀要, 51, 43-51.