日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 G (教育・アウトリーチ) » 教育・アウトリーチ

[G-03] 小・中・高等学校,大学の地球惑星科学教育

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 104 (1F)

コンビーナ:畠山 正恒(聖光学院中学高等学校)、座長:畠山 正恒(聖光学院)

14:15 〜 14:30

[G03-08] 偏光顕微鏡観察の学習のためのWebアプリケーションの開発

*森里 文哉1 (1.東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

キーワード:偏光顕微鏡、Webアプリケーション、地学教材

地学教育を通じて科学的な自然観を養うために,実際の自然現象や天然の試料を扱うことは必要不可欠である。しかしその目的達成の補助や普及の観点から,誰でも,いつでも,どこでも利用可能な良質な地学教材もまた必要であると考える。

例えば岩石や鉱物は多様な産状を示すため,それらの鑑定方法を習得するためには,複数の試料を比較しながら観察することが必要である。その中でも,偏光顕微鏡を用いた鑑定に関しては,特に自学自習において,顕微鏡や薄片試料の準備にかかる費用と手間が障壁となりえる。今回演者はその解決のため,偏光顕微鏡による岩石・鉱物の観察をインタラクティブに体験できるWebアプリケーション “SCOPin rock” (URL: https://microscope.fumipo-theta.com) を開発した。現段階ではサンプルの選択,視野の回転と拡大,オープンニコルとクロスニコルの切り替え,および可変スケールの表示を実装している。



偏光顕微鏡シミュレータとしての本アプリケーション独自の試みは,スマートフォンやタブレットを含む様々な端末への対応と,データ転送量の削減である。まず,本アプリケーションは,モダンブラウザ (Google Chrome, Safari, Microsoft Edge 等) がインストールされていれば端末を選ばず利用可能であり,端末のスクリーンサイズに合わせて最適なレイアウトで表示されるようになっている。また,視野画像のスムーズな回転を維持しつつ,オープンニコルとクロスニコルを合わせて1試料に必要な画像は12~24枚に抑えている。その結果,1280×1280 pxのJPEG画像を用いる場合のデータサイズは2~3.5MB程度で,かつサーバへのリクエスト回数が1回で済むよう工夫している。



このアプリケーションに対し, 次のようなユースケースを想定している。

1.授業において,教員はプロジェクタがあれば偏光顕微鏡写真をスクリーンに映し出すことができる。

2.授業において,生徒は全員同じ薄片写真を手元で確認し,操作することができる。

3.地質巡検において,案内時に岩石薄片写真を共有することができる。



今後は,ユーザーによる偏光顕微鏡画像データのアップロード機能の公開や,画像データのプライベートリポジトリ作成機能の提供を通じ,コンテンツの拡充や様々なユースケースへの対応を実現したい。