[HCG29-P01] マングローブ泥炭堆積域における海面上昇の影響実態の把握-Rhizophora属の立木密度と地盤高変動の関係-
キーワード:マングローブ群落、マングローブ泥炭、海面上昇、表層侵食、大洋島
フィリピンからミクロネシアに至る西太平洋低緯度地域では、近年、年10mmを超す速度で海面が上昇しつつある(IPCC 2013)。島嶼マングローブ立地は一般に流入土砂量が少ないため、まずRhizophora属の群落が成立し、マングローブ泥炭が堆積する。しかし、遷移が進むとその優占度が低下し、泥炭堆積速度は低下すると考えられる。泥炭堆積速度が低下した林分は海面上昇の影響をいち早く被る可能性が高い。ミクロネシア連邦ポンペイ島のR. stylosa林やR. apiculata林では今のところ海面上昇の影響はみられないものの、他の樹種が優占する林分では表層侵食が確認されている。本発表では、まずポンペイ島の主要群落に設置した侵食/堆積観測杭による1年間の地盤高変動について報告する。次にエスチュアリ型マングローブ林内に設置した1ha固定プロット(PE: 50m×200m)における20年間のモニタリングデータを用い、Rhizophora属の立木密度と地盤高変動の関係について分析する。
侵食/堆積観測杭には直径約5mmのステンレス製の棒を用い、R. stylosa、R. apiculata、Sonneratia alba、Bruguiera gymnnorhiza各群落内の既存固定プロット(それぞれ、PR, PC, PS, PK)の海側と内陸側(PCのみ中央部にも設置)に、基盤に達するまで、それぞれ5本ずつ設置した。各プロットの1年間の地盤高変化は、PRが0.98±0.86cm、‐0.82±1.37、PCが0.88±0.82、0,18±0.79(中央部)、0.40±0.25、PSが‐0.28±0.68、‐0.04±0.36、PKが‐0.18±1.85、‐0.14±1.37で、Rhizophora 群落で堆積、SonneratiaとBruguiera群落で侵食傾向にあることが確認された。なお、PEはエスチュアリ型立地にあり、泥炭層厚が5mを超えるため観測杭は設置できなかった。
PEではR. apiculataの分布に粗密がみられるため、その立木密度と地盤高変化の関係を分析した。分析にあたっては、ArcGIS 3D Analystを用いて1994年と2014年の地盤高図を作成し、それぞれ10m×10mのサブプロット毎に平均地盤高を求め、その差を20年間の地盤高変化データとした。立木密度は各サブプロット内のR. apiculataの出現本数をカウントして求めた。その結果、海側から0‐50mと150‐200m区間では両者の間に強い正の相関がみられた(それぞれr=0.454、0.642)。クリークを挟む50‐150mの間はほぼ全域が堆積傾向にあり、立木密度との関係はみられなかった。PEの堆積物は基本的にはマングローブ泥炭からなるが、河口部に位置するためやや無機物も混入する。プロット内ではS. albaの呼吸根分布にも粗密がみられるほか、板根を持つXylocarpus granatumの分布にも偏りがみられる。土砂流入が期待される立地では、クリークとの位置関係や土砂捕捉力に影響を与える可能性があるこれらの樹種との関係も分析する必要があろう。
侵食/堆積観測杭には直径約5mmのステンレス製の棒を用い、R. stylosa、R. apiculata、Sonneratia alba、Bruguiera gymnnorhiza各群落内の既存固定プロット(それぞれ、PR, PC, PS, PK)の海側と内陸側(PCのみ中央部にも設置)に、基盤に達するまで、それぞれ5本ずつ設置した。各プロットの1年間の地盤高変化は、PRが0.98±0.86cm、‐0.82±1.37、PCが0.88±0.82、0,18±0.79(中央部)、0.40±0.25、PSが‐0.28±0.68、‐0.04±0.36、PKが‐0.18±1.85、‐0.14±1.37で、Rhizophora 群落で堆積、SonneratiaとBruguiera群落で侵食傾向にあることが確認された。なお、PEはエスチュアリ型立地にあり、泥炭層厚が5mを超えるため観測杭は設置できなかった。
PEではR. apiculataの分布に粗密がみられるため、その立木密度と地盤高変化の関係を分析した。分析にあたっては、ArcGIS 3D Analystを用いて1994年と2014年の地盤高図を作成し、それぞれ10m×10mのサブプロット毎に平均地盤高を求め、その差を20年間の地盤高変化データとした。立木密度は各サブプロット内のR. apiculataの出現本数をカウントして求めた。その結果、海側から0‐50mと150‐200m区間では両者の間に強い正の相関がみられた(それぞれr=0.454、0.642)。クリークを挟む50‐150mの間はほぼ全域が堆積傾向にあり、立木密度との関係はみられなかった。PEの堆積物は基本的にはマングローブ泥炭からなるが、河口部に位置するためやや無機物も混入する。プロット内ではS. albaの呼吸根分布にも粗密がみられるほか、板根を持つXylocarpus granatumの分布にも偏りがみられる。土砂流入が期待される立地では、クリークとの位置関係や土砂捕捉力に影響を与える可能性があるこれらの樹種との関係も分析する必要があろう。