日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG32] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 105 (1F)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:清家 弘治

14:20 〜 14:35

[HCG32-02] 大阪湾の海底に見られるサンドウェーブの移動

*小島 響1松野 哲男2,3佐野 守2島 伸和3,2遠藤 徳孝4大串 健一1谷 篤史1 (1.神戸大学 大学院人間発達環境学研究科、2.神戸大学 海洋底探査センター、3.神戸大学 大学院理学研究科、4.金沢大学 理工研究域地球社会基盤学系)

キーワード:サンドウェーブ、大阪湾、移動

固結していない砂粒子などに水の流れが作用することで形成される波長数m-数百mの微小地形をサンドウェーブと呼ぶ.大阪湾内の淡路島東縁の沖ノ瀬と呼ばれる海域には沖ノ瀬環流と呼ばれる恒流が存在し,沖ノ瀬の水深が30-45 mの海底付近では,波長10-100 m規模のサンドウェーブが観測されている.しかし,沖ノ瀬のサンドウェーブの詳細な特徴,形成機構,変化機構等の解明は水産資源保護や航海安全確保の観点から重要であるにも関わらず,詳細は不明である(八島, 1992).本研究では,現在の大阪湾沖ノ瀬の海底に見られるサンドウェーブを約1年間に6回地形調査観察することで,沖ノ瀬のサンドウェーブがこの期間にどの方向にどの程度移動するか評価した.
 2017年9月27日,11月12日,2018年3月24日,8月31日,9月26日,10月13日の6回にわたり,神戸大学大学院海事科学研究科附属練習船「深江丸」に搭載されているマルチナロービーム測深器を用いた沖ノ瀬の海底地形の調査,ならびにグラブ式採泥器を用いた採泥を行った.南北2 km,東西1 kmを調査範囲とした.
 得られた海底地形図を解析したところ,沖ノ瀬南東部で波長の異なるサンドウェーブが観察された.Perillo and Ludwick (1984)の基準に従うと,沖ノ瀬南東部で確認されたサンドウェーブは,大きいサンドウェーブ(波長50 m以上,波高2 m以上),小さいサンドウェーブ(波長10-50 m,波高0.6-2 m),メガリップル(波長10 m未満,波高60cm未満)の主に3種類に分けられることが明らかになった.この期間の観察において,大きいサンドウェーブの移動は確認できなかったが,小さいサンドウェーブは5 mほど北進し,メガリップルは日々変動しているという結果が得られた.通常,サンドウェーブは残差流(ここでは沖ノ瀬環流で北方向となる)の方向に移動することが知られており(Nemeth et al., 2002),沖ノ瀬でも同様であることが明らかとなった.また,2018年6月18日に大阪北部地震,同年8月23日に台風20号,同年9月4日に台風21号と沖ノ瀬周辺で大きな波をもたらす災害があったが,大きいサンドウェーブへの影響は見られなかった.
 サンドウェーブの構造化は国内外で報告例(鹿児島県大隅海峡(Ikehara, 1998)やスペインカディス湾(Nemeth et al., 2007)など)があるが,大阪湾の沖ノ瀬のサンドウェーブが大きく3種類に構造化できるということは今回の調査で新しく判明した.形成されるサンドウェーブの波長・波高の大きさは,深度,底質の粒径,海底付近の海水の流れの大きさによって決まるため,海水の流れの評価は重要である.しかし,海底付近の海水の流れを実測することは困難であるため,現時点では,海底付近の海水の流れと小さいサンドウェーブの移動を関連付けて説明するには至っていない.現在,沖ノ瀬の海底付近の海水の流れをシミュレーションによって明らかにすることを検討しており,その結果から沖ノ瀬のサンドウェーブの形成機構に迫っていきたいと考えている.