15:45 〜 16:00
[HCG32-06] 北海道夕張地域中新統川端層のBoumaシークエンスを示す混濁流堆積層の有機物分析による植物片濃集機構の解明
キーワード:タービダイト、バイオマーカー、北海道
【はじめに】北海道中央部夕張地域に分布する新第三系中新統川端層は、堆積盆底タービダイトとファンデルタ性のタービダイトで構成されていると考えられている(川上ほか,2002).川端層ではタービダイト性の砂泥互層が卓越するが、稀に中粒〜細粒で構成される砂岩層全体に植物片がラミナ状に濃集する砂岩層(植物片濃集砂岩層)が見つかる。Furota et al. (2014) では川端層の植物片濃集砂岩層の堆積学的研究およびバイオマーカー分析が行われており、ハイパーピクナル流によって形成された堆積物(ハイパーピクナイト)の可能性が強く示唆されている。一方で川端層ではBoumaシークエンスを示すタービダイトでも薄くはあるが有機物濃集層が形成されており、今まで植物片濃集砂岩層との比較はされていなかった。今回はBoumaシークエンスを示す典型的なタービダイトのバイオマーカー分析を行い、タービダイト内の有機地球化学的傾向から堆積過程の検討や、植物片濃集砂岩層との比較を行う。
【試料と方法】サンプルは2017年に記載、採取した北海道夕張地域の草木舞沢に露出する砂泥互層内の一連のタービダイト堆積物を用いた。有機地球化学分析としてバイオマーカー分析を行った。バイオマーカー分析として、脂質をジクロロメタン/メタノールで抽出した後に、シリカゲルカラムによって無極性〜極性成分(脂肪族炭化水素画分、芳香族炭化水素画分、極性画分)に分画した。すべての画分をGC-MSおよびGC-FIDを用いてバイオマーカー分析した。
【結果と考察】今回分析した堆積相は15cm程の層厚を持ち、下部から緩く級化を示す中-細粒砂岩層, 平行葉理層, 有機物が濃集する薄い細粒砂岩層, 堆積構造を持たない極細粒-シルト層の4つのユニットが確認され, Tdを欠くBoumaシークエンスと考えられる。有機物の存在は、Ta部では細かく黒い植物片が点在し、Tb部では葉理部に植物片が存在している。Tc部に相当する部分では比較的黒く帯状の構造が複数見られ、植物片の濃集層と考えられる。上部のTe部では植物片は目下の観察では確認できなかった。
タービダイト内のn-アルカンの存在量はTaで最も低く、Tb, Tcで最も値が高く、Teでは減少傾向にある。この傾向は植物由来テルペノイドでも同様の傾向を示した。Pr/Ph値はTa, Teでは約3であり, Tb, Tcで5以上ととても高い値を示し、TbからTcにかけて陸上植物の寄与が特に高いことを示す。海成/陸源有機物の寄与の割合を評価するC27/29ステラン比はTaから徐々に減少していき、Tcではほぼ0となり、最上部のTeでは全ての層準の中で最も高い値を示した。これらの結果は、混濁流として再堆積する際に植物起源粒子の分別・濃集を示しており、断続的に有機物を輸送するハイパーピクナル流によって形成される堆積物とは異なっている。トリテルペノイドとジテルペノイドはそれぞれ被子植物と裸子植物、特に針葉樹のバイオマーカーとして使われている。ジテルペノイド組成は、脂肪族炭化水素画分, 芳香族画分ともにTaからTeに至るまでほとんど変化を示さず、陸上植物中の針葉樹の寄与を示すHPP指標もほとんど変化しなかった。このような特徴はトリテルペノイドでも同様であり、これはBoumaシークエンスが、混濁流により運搬・再堆積する際に組成が均一したことを示すと考えられ、堆積層内で組成に変化があるハイパーピクナイトとは異なる特徴である。des-A トリテルペノイドは、五環性のトリテルペノイドが初期続成段階で微生物分解の影響などによりA環が開裂することで形成される。des-A トリテルペノイドはすべての層準から検出され、その組成にも堆積層毎に変化は見られない。しかし、des-A トリテルペノイド/五環性(減成していない)トリテルペノイド比は全体的に高い値を示したが、特にTb, Tcで特に高い値を示した。風呂田ほか(2014)では、ハイパーピクナイトでは泥岩と比べdes-A トリテルペノイド/五環性トリテルペノイド比は低い値を示すことが報告されており、この違いはハイパーピクナル流が新鮮な有機物を陸上から迅速に輸送するプロセスとは異なり、A環開裂過程を経たトリテルペノイドが時間をかけて堆積し、混濁流により再堆積・有機物濃集したことを示していると考えられる。ハイパーピクナル流による堆積物と典型的なタービダイトシークエンスを示す堆積物では有機地球化学的特徴が異なっており、ハイパーピクナル流がより多量かつ新鮮な陸源有機物を大量に輸送する機構であることを改めて示唆している。
【試料と方法】サンプルは2017年に記載、採取した北海道夕張地域の草木舞沢に露出する砂泥互層内の一連のタービダイト堆積物を用いた。有機地球化学分析としてバイオマーカー分析を行った。バイオマーカー分析として、脂質をジクロロメタン/メタノールで抽出した後に、シリカゲルカラムによって無極性〜極性成分(脂肪族炭化水素画分、芳香族炭化水素画分、極性画分)に分画した。すべての画分をGC-MSおよびGC-FIDを用いてバイオマーカー分析した。
【結果と考察】今回分析した堆積相は15cm程の層厚を持ち、下部から緩く級化を示す中-細粒砂岩層, 平行葉理層, 有機物が濃集する薄い細粒砂岩層, 堆積構造を持たない極細粒-シルト層の4つのユニットが確認され, Tdを欠くBoumaシークエンスと考えられる。有機物の存在は、Ta部では細かく黒い植物片が点在し、Tb部では葉理部に植物片が存在している。Tc部に相当する部分では比較的黒く帯状の構造が複数見られ、植物片の濃集層と考えられる。上部のTe部では植物片は目下の観察では確認できなかった。
タービダイト内のn-アルカンの存在量はTaで最も低く、Tb, Tcで最も値が高く、Teでは減少傾向にある。この傾向は植物由来テルペノイドでも同様の傾向を示した。Pr/Ph値はTa, Teでは約3であり, Tb, Tcで5以上ととても高い値を示し、TbからTcにかけて陸上植物の寄与が特に高いことを示す。海成/陸源有機物の寄与の割合を評価するC27/29ステラン比はTaから徐々に減少していき、Tcではほぼ0となり、最上部のTeでは全ての層準の中で最も高い値を示した。これらの結果は、混濁流として再堆積する際に植物起源粒子の分別・濃集を示しており、断続的に有機物を輸送するハイパーピクナル流によって形成される堆積物とは異なっている。トリテルペノイドとジテルペノイドはそれぞれ被子植物と裸子植物、特に針葉樹のバイオマーカーとして使われている。ジテルペノイド組成は、脂肪族炭化水素画分, 芳香族画分ともにTaからTeに至るまでほとんど変化を示さず、陸上植物中の針葉樹の寄与を示すHPP指標もほとんど変化しなかった。このような特徴はトリテルペノイドでも同様であり、これはBoumaシークエンスが、混濁流により運搬・再堆積する際に組成が均一したことを示すと考えられ、堆積層内で組成に変化があるハイパーピクナイトとは異なる特徴である。des-A トリテルペノイドは、五環性のトリテルペノイドが初期続成段階で微生物分解の影響などによりA環が開裂することで形成される。des-A トリテルペノイドはすべての層準から検出され、その組成にも堆積層毎に変化は見られない。しかし、des-A トリテルペノイド/五環性(減成していない)トリテルペノイド比は全体的に高い値を示したが、特にTb, Tcで特に高い値を示した。風呂田ほか(2014)では、ハイパーピクナイトでは泥岩と比べdes-A トリテルペノイド/五環性トリテルペノイド比は低い値を示すことが報告されており、この違いはハイパーピクナル流が新鮮な有機物を陸上から迅速に輸送するプロセスとは異なり、A環開裂過程を経たトリテルペノイドが時間をかけて堆積し、混濁流により再堆積・有機物濃集したことを示していると考えられる。ハイパーピクナル流による堆積物と典型的なタービダイトシークエンスを示す堆積物では有機地球化学的特徴が異なっており、ハイパーピクナル流がより多量かつ新鮮な陸源有機物を大量に輸送する機構であることを改めて示唆している。