日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG32] 堆積・侵食・地形発達プロセスから読み取る地球表層環境変動

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 105 (1F)

コンビーナ:清家 弘治(産業技術総合研究所・地質調査総合センター)、山口 直文(茨城大学 広域水圏環境科学教育研究センター)、成瀬 元(京都大学大学院理学研究科)、高柳 栄子(東北大学大学院理学研究科地学専攻)、座長:高柳 栄子(東北大学)、清家 弘治

16:00 〜 16:15

[HCG32-07] タービダイトに記録された前弧海盆の沈降変遷: 鮮新-更新統掛川層群

*曾根 明樹1 (1.島根大学大学院 自然科学研究科 環境システム科学専攻 地球科学コース)

キーワード:掛川層群、タービダイト、前弧海盆

この研究では,タービダイトの層厚や古流向の情報を利用して,堆積盆の「動き」の復元を試みた.地形的に複雑な堆積盆を流れる混濁流は地形の影響を受けて流れの方向を変える.これまで,鮮新-更新統掛川層群において,先行研究では,陸側から流れてきた混濁流が,沖合の地形的高まり (外縁隆起帯)によって流れの方向が反転した証拠を見つけた.これらの研究では,凝灰岩に沿って広域的にタービダイトを対比し,その特徴の変化から,堆積盆の地形を復元した.その時に利用したアイデアは,(1) タービダイト砂岩は盆地の地形変換点で流れがよどむために,厚くなる,(2) 泥は盆地の中心で厚くなる,ことである.先行研究では掛川層群中部の一部の層準で,掛川堆積盆内での堆積中心が時間と共にシフトしたことを示した.盆地の発達を理解するためには,さまざまな層準に対して,この解析方法を適用する必要がある.ここでは,掛川層群下部のタービダイトの特徴を記載し,古流向の情報などから,反転したタービダイトの有無を確認,その情報を元に堆積盆の沈降や隆起の変遷が読み取れたので,報告する.

 掛川層群中部から下部にかけては砂泥互層からなる.ここでは,下部の砂岩泥岩互層に焦点を向けた.掛川層群の下部の砂岩泥岩互層内には,斜交層理や,地滑りなどの斜面運動によって変形させられたコンボリュート構造などが見られる.この斜交層理の走向・傾斜方向を測ることで古流向を求め,コンボリュート構造の斜面下方にずれを生じた褶曲軸を測ることで古斜面方向を求めた.

 調査の結果,掛川層群中部の砂岩泥岩互層は細粒‐極細粒砂から構成され,反転タービダイトの特徴が見られる.しかしながら,下部のタービダイトの特徴は中部とは異なり,粗粒‐極粗粒砂から構成され,厚い塊状部,薄い平行葉理と斜交層理が見られる.また,いくつかのタービダイトはうねった葉理の中に上に凸の構造がみられ,これはアンティデューンの一部であると解釈される.さらに,タービダイトの最上部の泥が欠損したタービダイトや,マッドクラストを多く含む層が見られた.これらは小規模な海底地すべりによって形成されたと考えられる.掛川層群内の沖に向かった流れは東から南にかけて優勢とされる.反転流による堆積構造を持つタービダイトは研究地域の中部から下部にかけて存在頻度が減少し,全く見られない層準も存在する.このことは,研究地域下部のタービダイト層は陸側から沖合に向かった斜面環境下で沖合に向かう流れによって堆積して形成されたことを示す.すなわち,掛川層群下部では堆積物が北側から南に向けて前進するように堆積し,堆積盆の中心は掛川層群の中部よりも沖合に位置していたと考えられる.本研究で,研究地域内で反転タービダイトの存在頻度が変化していることが明らかとなった.この変化の要因を調べるために,より広範囲を調査する必要がある.この変化の一つの可能性として,沖合の地形的高まり(外縁隆起帯)の隆起の速度の変化が考えられる.