日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG33] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システム

2019年5月26日(日) 15:30 〜 17:00 202 (2F)

コンビーナ:富田ー横谷 香織(筑波大学生命環境系)、篠原 正典(帝京科学大学)、木村 駿太(筑波大学大学院生命環境科学研究科)、座長:木村 駿太

15:47 〜 16:07

[HCG33-02] 宇宙における水産養殖の概念と研究 ―これまで、そしてこれから―

★招待講演

*遠藤 雅人1 (1.東京海洋大学)

キーワード:水産養殖、食料生産、制御生態系生命維持システム

我々はこれまで20年にわたり宇宙における閉鎖生態系居住施設における食料生産、特に動物性蛋白質の供給源として魚類養殖を提案し、様々な研究を進めてきた。実質的には宇宙環境下で変化する重力への対象種の応答や物質循環型の魚類生産について知見の集積を行ってきた。これらは宇宙環境下における水産養殖の可能性を示すものであり、今後の宇宙居住をより具体化するうえで必要な基礎的データとなる。これまでの宇宙における水産養殖の概念とそれを検証するための研究は生産に特化したものであった。今後、生産の効率化に関しては地上での技術開発が進められている自動飼育・培養技術の導入が望まれる。生産の効率化以外に居住施設全体の物質フローや生産後の利用に関しての検討が必要になる。物質とエネルギーのフローにおいては他のサブシステムも含めた総合的な検討が必要であり、これまで蓄積された各モジュールでの基礎データを数理モデルとして組み上げ、様々なシミュレーションから研究を進めることが望まれる。また、生産物の保存に関しても物質循環のバッファーとしての検討が必要となる。この点に関しては冷凍、缶詰やレトルトの技術の活用が必要不可欠である。最後に要求と制約を考慮した食や人工生態系の多様性を検討する必要がある。人工生態系の物質フローの構築、生産種の選定、各種調理法の選択にはそれぞれ様々な要求と制約が生じる。これに関しても宇宙居住施設全体の要求と制約を考慮したうえでの選択肢の準備が必須であると考えられる。