日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-CG 地球人間圏科学複合領域・一般

[H-CG33] 圏外環境における閉鎖生態系と生物システム

2019年5月26日(日) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:富田ー横谷 香織(筑波大学生命環境系)、篠原 正典(帝京科学大学)、木村 駿太(筑波大学大学院生命環境科学研究科)

[HCG33-P02] 食用藍藻スピルリナが生産する細胞外高分子物質EPSの機能評価

*渡辺 智1岩崎 拓海1坂巻 裕1兼崎 友2大森 正之3 (1.東京農大・バイオ、2.静岡大学・グリーン研、3.東京大学)

キーワード:シアノバクテリア、スピルリナ、細胞外高分子物質

植物と同様の酸素発生型光合成を行う藍藻は、様々な環境に生息し地球環境の維持に大きく貢献している。アフリカの塩湖であるチャド湖から単離された糸状性藍藻Arthrosphila platensis(通称、スピルリナ)は、古くから現地で食されており現在では健康食品や色素の材料として産業的に生産されている。塩湖から単離されたスピルリナは好塩性、好アルカリ性形質を有しており、開放環境においても無菌的に大量培養することが可能である。
 細胞外高分子物質(Extracellular Polymeric Substances: EPS)は微生物が細胞外へと分泌する高分子の総称で、主に多糖類とタンパク質から構成される。環境中では微生物の細胞を保護する役割を持つが、粘性、保水性を示すことから素材業界においても注目されている。特にスピルリナはEPSの一種であるスピルランを生産する。スピルランは免疫調節作用などヒトに対して健康機能性を有することが示されており、その安全性も含め関心を集めているが、スピルラン生産の分子機構に関しては不明な点が多い。
 我々はこれまでに、強光ストレスに曝されることによってスピルリナがEPS生産を促進することを見出した。スピルリナは強光ストレスによって生じた過剰な還元力を消費するために大量の糖を合成し、スピルランとして細胞外へ排出していると考えられる。本発表ではストレス時に生産されるスピルリナEPS の機能性、生産メカニズムを解析した。CE-TOF-MSを用いたメタボローム解析によりスピルリナEPSに含まれる代謝産物量を測定した結果、市販スピルリナ粉末に比べスピルリナEPSにはアミノ酸が多く含まれることが示された。またNGSを用いたトランスクリプトーム解析よりEPS形成過程の遺伝子発現変動を解析しEPSの生産に関わる遺伝子を絞り込んだ。