09:00 〜 09:15
[HDS10-01] 海岸砂丘の生態系サービスを活用した人々の暮らし
★招待講演
キーワード:生態系サービス、海岸砂丘、産業、再生
1.はじめに
海岸砂丘は、海と陸地の間の緩衝帯であり、生物多様性の形成、津波等の自然災害を緩和する機能を有している。人々は、古くから海岸砂丘に集落「まち」を形成し、海岸砂丘による生態系サービス(自然の恩恵)を受けていた。しかし、高度経済成長期以降、人口増加、開発の進行により、海岸砂丘は破壊され、人々が自然の恩恵を受ける機会が減少した。今回は、大規模沿岸開発前の海岸砂丘における人々のくらしから海岸砂丘の機能および生態系サービスを評価し、今後の社会情勢変化に伴う海岸砂丘の再生について考える。
2.調査方法
調査地は、千葉県の東京湾側の沿岸都市とした。東京湾側は、昭和30年以降、大規模な沿岸開発が行われたことから、開発前の海岸砂丘を評価する上で有効な場所と判断した。今回、調査地の景観、環境(土壌・地下水)について調べた。
3.調査結果および考察
千葉県は、1993年は自然海岸が23.5%で、約70.0%が人工海岸等であった。調査地の沿岸都市では、昭和初期にて醤油、味噌、酒蔵等の醸造業が存在し、その地域の必需品および嗜好品として支えていた。海岸砂丘の淡水層や海の生物等の生態系サービスを利用した産業であった。主要な沿岸都市の立地環境(土壌・地下水位・水質)を調べた結果、調査地の沿岸都市は、海岸砂丘上(地形分類は砂洲、砂堆・自然堤防、表層地質は砂がち堆積物、砂地)に位置し、井戸の深度も表層下2-10mで海岸砂丘の淡水層の水を生活・産業用水として使用していた。また、③ 沿岸都市周辺を含め、海から台地にかけて、砂地と湿地が交互し、海岸砂丘を形成していた。これらのことから、当時の醤油・味噌・酒の醸造場は、海岸砂丘の機能と環境(淡水層)を利用していたと推察される。
4.今後、日本が直面する社会と海岸砂丘のあり方
今後は、① 人口減少、少子高齢化の進行、② 経済の衰退、税収の減少、財政の逼迫、③ インフラ(道路・鉄道等)の老朽化、維持管理の問題であり、社会は大きな転換期を迎えようとしている。特に、沿岸の工業地帯においては、高度経済成長期の工業化社会において世界最大級の都市隣接型の工業地帯として日本の経済発展に大きく貢献したが、現在では、中長期的な国内需要の縮小やグローバル競争の激化により大手製造業の海外への移転で生産設備の休止・停止の企業が増加、遊休地は拡大している。また、施設の老朽化が進行しているが、各企業の現状の財政状況では再整備は困難であるのと、2011年の東日本大震災で発生した液状化現象、津波、高潮からの防災・減災の災害対策が必要であることから、今後の課題は、行政・企業・地域住民・学識者と連携しながら、遊休地を活用した自然海岸砂丘の再生(グリーンインフラ)を取り組めるかである。
海岸砂丘は、海と陸地の間の緩衝帯であり、生物多様性の形成、津波等の自然災害を緩和する機能を有している。人々は、古くから海岸砂丘に集落「まち」を形成し、海岸砂丘による生態系サービス(自然の恩恵)を受けていた。しかし、高度経済成長期以降、人口増加、開発の進行により、海岸砂丘は破壊され、人々が自然の恩恵を受ける機会が減少した。今回は、大規模沿岸開発前の海岸砂丘における人々のくらしから海岸砂丘の機能および生態系サービスを評価し、今後の社会情勢変化に伴う海岸砂丘の再生について考える。
2.調査方法
調査地は、千葉県の東京湾側の沿岸都市とした。東京湾側は、昭和30年以降、大規模な沿岸開発が行われたことから、開発前の海岸砂丘を評価する上で有効な場所と判断した。今回、調査地の景観、環境(土壌・地下水)について調べた。
3.調査結果および考察
千葉県は、1993年は自然海岸が23.5%で、約70.0%が人工海岸等であった。調査地の沿岸都市では、昭和初期にて醤油、味噌、酒蔵等の醸造業が存在し、その地域の必需品および嗜好品として支えていた。海岸砂丘の淡水層や海の生物等の生態系サービスを利用した産業であった。主要な沿岸都市の立地環境(土壌・地下水位・水質)を調べた結果、調査地の沿岸都市は、海岸砂丘上(地形分類は砂洲、砂堆・自然堤防、表層地質は砂がち堆積物、砂地)に位置し、井戸の深度も表層下2-10mで海岸砂丘の淡水層の水を生活・産業用水として使用していた。また、③ 沿岸都市周辺を含め、海から台地にかけて、砂地と湿地が交互し、海岸砂丘を形成していた。これらのことから、当時の醤油・味噌・酒の醸造場は、海岸砂丘の機能と環境(淡水層)を利用していたと推察される。
4.今後、日本が直面する社会と海岸砂丘のあり方
今後は、① 人口減少、少子高齢化の進行、② 経済の衰退、税収の減少、財政の逼迫、③ インフラ(道路・鉄道等)の老朽化、維持管理の問題であり、社会は大きな転換期を迎えようとしている。特に、沿岸の工業地帯においては、高度経済成長期の工業化社会において世界最大級の都市隣接型の工業地帯として日本の経済発展に大きく貢献したが、現在では、中長期的な国内需要の縮小やグローバル競争の激化により大手製造業の海外への移転で生産設備の休止・停止の企業が増加、遊休地は拡大している。また、施設の老朽化が進行しているが、各企業の現状の財政状況では再整備は困難であるのと、2011年の東日本大震災で発生した液状化現象、津波、高潮からの防災・減災の災害対策が必要であることから、今後の課題は、行政・企業・地域住民・学識者と連携しながら、遊休地を活用した自然海岸砂丘の再生(グリーンインフラ)を取り組めるかである。