日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS11] Subaqueous Landslides and Their Anthropogenic Impact for Coastal Regions

2019年5月27日(月) 13:45 〜 15:15 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:北村 有迅(鹿児島大学大学院理工学研究科地球環境科学専攻)、山田 泰広(海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター)

[HDS11-P04] 「白鳳丸」KH-18-3次研究航海で採取された八代海の堆積物コア試料のベーンせん断強さと帯磁率

*北村 有迅1影山 遼2山﨑 楓2後藤 滝弥2堀 航喜2池端 雄太2川端 訓代1小山 大輝2白鳳丸KH-18-3 乗船研究者 (1.鹿児島大学大学院理工学研究科地球環境科学専攻、2.鹿児島大学理学部地球環境科学科)

キーワード:タービダイト、浅海堆積物、平成28年熊本地震

1. はじめに

2016年4月に起きた熊本地震は,布田川断層帯・日奈久断層帯における一連の地震である.このうち,日奈久断層帯の南西部は「八代海区間」を構成している.地震は海底地すべり発生の引き金となるが,熊本地震発生後,海域での調査はほとんど行われていない.そこで,「白鳳丸」KH-18-3次研究航海において八代海で11本のピストンコア試料(PC01~PC11)を採泥した.また,海底地すべり堆積物の下層ではせん断強さが小さくなる(Flemings et al., 2012)ことから,せん断強さは海底地すべりの評価において重要な役割を果たす.本研究では,海底地すべりが発生した可能性の高い八代海のコア試料において,ベーンせん断試験でせん断強さを算出し,八代海の堆積物分布を考察した.

2. 手法

 航海は2018年7月27日から7月30日の期間に八代海において学術研究船「白鳳丸」を利用して行われた.長さ6 m,直径7.5 cmの塩ビ管を用いてピストンコアラーによる11地点の採泥を行い,船上において6つのセクションに切り分けた.採取したコアは高知コアセンターに持ち込み物性測定を行った.CTスキャナとマルチセンサーコアロガー(MSCL)を用いた非破壊計測を行い,それぞれ内部構造の計測とγ線密度・帯磁率を測定した.CTスキャンの結果からはCT値を抽出した.その後肉眼記載を行い,非破壊計測のデータとあわせて柱状図を作成した.その後,1本のコアをアーカイブ(保存用)コアとワーキング(作業用)コアに半裁した.ベーンせん断試験は,肉眼記載後のワーキングコアにおいておよそ50 cm間隔で実施した.試験にはトルクメーターに取り付けた十字型のベーン(羽根)を使用した.ベーンを試料に押し込み,軸を水平に回転させて,試料を破断するのに要する最大モーメントからせん断強さを算出した.また,蛍光X線分析を行い,主要元素濃度を測定した.

3. 結果と考察

帯磁率

採取されたコアは主にオリーブ灰や黒の砂泥を基質とする.CT値と帯磁率,γ線密度は深さに伴って増加傾向にあった.しかし,帯磁率は周期的にピークを繰り返していることが結果からわかったため,ピークを一つのユニットとして層区分を行った.区分した層は八木ほか(2016)による高分解能地層探査断面図と井上ほか(2011)で採取されたピストンコアを用いて比較した.

地層探査断面図では,帯磁率によって区分した層と音波探査による層を対比させることが可能であった.八木ほか(2016)による解釈から,白神岩付近で採取したコアは最終氷期極相期~縄文海進時の堆積物を含むことがわかった.このように,本コアにおいて帯磁率の周期的なピークは堆積時の環境・堆積層を反映していることがわかった.

帯磁率を用いた井上ほか(2011)とのコア対比は概ね帯磁率が一致しており, PC02とPC06ではイベント層の推定が可能であった.推定されたイベント層では帯磁率が極大を示す傾向がある.鉄濃度はイベント層の前後で相対的に高くなる傾向がみられたことから,鉄の濃度を用いたイベント層の推定が可能であると考えられる.鉄の濃度がイベント層で変化する要因として,タービダイトの発生後は重い粒子が先に沈殿すると考えられ,重金属である鉄も早くに沈殿するためであると考えられる.

ベーンせん断強さ

そして,田浦-津奈木沖断層群の北東部に位置するPC01・PC02・PC07は深度に伴ってせん断強さが増加している.そのため,埋没による圧密が堆積物の強度増加の主要因であると考えられる.また,井上ほか(2011)の年代測定結果と比較したところ,年代のギャップがある部分でせん断強さの増加率が変化している.このことから,年代の違いによる圧密の影響を受けた堆積物であると考えられる.PC03については,下部の火山灰層が特異的なせん断強さを示すが,その他の層については深度に伴ってせん断強さが大きくなっている.PC04・PC05・PC06については,最上部のみせん断強さが小さいことから,上部の堆積物は削剥された可能性がある.田浦-津奈木沖断層群西部に位置するPC10には砂や礫といった粗粒分が堆積している.また,水俣沖断層群に位置するPC09・PC11はせん断強さと間隙率に相関関係がなく,せん断強さが深度に伴って増加するという傾向はみられない.PC11については,最上部に堆積した泥が削剥されて欠落していると考えられる.