日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-DS 防災地球科学

[H-DS14] 湿潤変動帯の地質災害とその前兆

2019年5月27日(月) 15:30 〜 17:00 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 8ホール)

コンビーナ:千木良 雅弘(京都大学防災研究所)、八木 浩司(山形大学地域教育文化学部)、小嶋 智(岐阜大学工学部社会基盤工学科)、内田 太郎(国土技術政策総合研究所)

[HDS14-P08] 干渉SAR解析によって捉えられた2018年北海道胆振東部地震に伴う札幌市内の被害状況と地形の関係性

*横田 彰宏1西村 智博2重野 聖之1本田 謙一2向山 栄2 (1.明治コンサルタント株式会社、2.国際航業株式会社)

キーワード:干渉SAR、地盤変位、2018年北海道胆振東部地震

平成30 年(2018 年)北海道胆振東部地震では,札幌市清田区をはじめ広範囲で地盤変位による道路や建物被害が発生した.これら自然災害で生じた被害を迅速に把握することは,支援および救急活動を円滑にし,減災を進める上で重要であると考えられる.
合成開口レーダ(SAR)を用いた干渉SAR解析は,天候に左右されることなく,広範囲で地表形状の微小な変位を抽出できるので,今回の地震調査にも適用した結果,表層地盤や建物に被害が発生した可能性がある場所を迅速に検出できたことが報告されている(向山ほか,2019など).
筆者らは,Sentinel-1衛星により取得された地震前後のSARデータを解析して推定された変位について,空中写真判読および現地踏査から,被害状況や旧地形について調査を行い,干渉SAR結果の妥当性と変位の原因について検討を行った.

SAR解析の結果,札幌市清田区清田・里塚・美しが丘のほか,豊平区平岸,東区伏古-苗穂などでも顕著な変位が観測され,大きな地震被害が推定された.これらの地区を対象に,現地踏査による変位状況と,米軍写真等を用いた地形判読や土地利用変遷について調査を行った.
調査の結果,東区伏古-苗穂地区では,旧豊平川(伏古川)の蛇行した河道地形や氾濫原となる地形が分布し,旧河道の埋め立て部や河道縁辺部に沿って最大5 cm程度の地盤沈下が集中していることが確認された.豊平区平岸では,平岸面にあたる河川段丘と月寒川支流河川の侵食で形成された沖積低地が分布し,沖積低地の一部と,元採石場を埋め立てた箇所で地盤沈下が確認された.
これらの地盤変位が確認される箇所は,SAR解析で大きな変位が推定された箇所にほぼ一致し,地盤沈下の他に建物に亀裂や,躯体が抜け上がるなどの被害が生じていた.また,清田区清田・里塚・美しが丘においても,SAR解析により大きな変位が推定された箇所では,同様に地表部の変位が確認された.
今回確認された地盤変位は,旧河道や旧地形を人工的に埋め立てた改変地に集中しており,旧地形や盛土箇所との相関が高いと考えられる.

2018年北海道胆振東部地震後の地盤変位に伴う被害について,Sentinel-1衛星によるSARデータを利用することにより,短時間に広域の概略被害状況を把握できることが明らかとなった.

参考文献
向山栄・本田謙一・西村智博(2019)衛星SARや航空レーザ計測データを用いた地震時の家屋・地盤被害の把握技術.地盤工学会誌,Vol. 67,No. 3
横田彰宏・重野聖之・西村智博・本田謙一・向山 栄(2019)干渉SARと古地理でみる札幌市の地震被害-2018年北海道胆振東部地震-.日本地理学会発表要旨集.