日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2019年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 101 (1F)

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:八反地 剛

09:00 〜 09:15

[HGM04-01] 湿度変化により生じる塩類風化に関する室内実験

*佐藤 昌人1八反地 剛2 (1.筑波大学大学院生命環境科学研究科、2.筑波大学生命環境系)

キーワード:塩類風化、湿度、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、表面硬度

湿度変化環境での塩類風化について,一連の室内実験を行った.湿度変化による風化実験には,5種類の岩石(間隙の多い凝灰岩と砂岩,間隙が少ない砂岩,間隙が多い2種類の泥岩)と3種類の塩(塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム,硫酸マグネシウム)を使用した.塩溶液に浸した後,110℃で炉乾燥させた岩石試料を恒温恒湿庫内に設置した.温度を20℃に保った状態で,湿度を20~90%RHの範囲,6時間周期で変化させ,塩類風化実験を行なった.風化実験時には岩石は乾燥しており,水分の供給源は空気中の水分に限られた.
湿度の周期的変化により,岩石試料に含まれる塩は,高湿度期に潮解または水和し,低湿度期には,再結晶,または脱水した.塩類風化が著しい試料ほど,高湿度期には多くの水分を吸着した.80%RH以上で潮解性を示す塩化ナトリウムは,硫酸塩2種よりも著しい風化を引き起こした.
100サイクルの湿度変化後,間隙が多い砂岩試料は完全に破壊した.間隙率の低い砂岩,間隙が多い凝灰岩でも,試料表面の膨張,岩片の剥離が生じた.また,間隙率の低い砂岩では,試料表面のエコーチップ反発値が低下した.本実験でみられたような,湿度変化に伴う塩化ナトリウムによる塩類風化は,湿度が高い海水飛沫帯では容易に発生し得る.
硫酸マグネシウムを含ませた試料では,間隙率が高い砂岩の重量減少,間隙率が高い凝灰岩表面からの岩片の剥離などが生じ,間隙率が低い砂岩でも表面に平行な亀裂が発達した.硫酸ナトリウムを含ませた試料表面には多量の塩が析出していたが,重量やエコーチップ反発値はほとんど変化しなかった.硫酸マグネシウムは水和反応速度が遅く,短期間での湿度変化では,塩類風化を引き越しにくかったのであろう.また,硫酸ナトリウムが水和により体積膨張したことで,試料表層の間隙が塞がれ,試料内部への水分の浸透が阻害された可能性がある.日周期のような短時間で湿度が変動するような環境では,硫酸ナトリウムは塩類風化を起こしにくく,硫酸マグネシウムの相対的な重要性が高くなるだろう.