日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-GM 地形学

[H-GM04] 地形

2019年5月29日(水) 09:00 〜 10:30 101 (1F)

コンビーナ:八反地 剛(筑波大学生命環境系)、瀬戸 真之(福島大学うつくしま福島未来支援センター)、座長:八反地 剛

09:15 〜 09:30

[HGM04-02] 風洞実験による新たな飛砂抑制装置の検証

*小玉 芳敬1三枝 理子2 (1.鳥取大学農学部、2.鳥取大学地域学部・学)

キーワード:水面飛砂抑制装置、風洞実験、躍動粒子、鳥取砂丘

はじめに

鳥取砂丘東入口の階段では,西風によって飛砂が堆積し,その除去作業が年間30回ほどを数え(自然公園財団鳥取支部,私信),課題となっている.これまでは堆砂垣による方策が講じられてきたものの,さらなる改善策が求められている.本研究ではsaltation粒子の運動特性を踏まえて,粒子の着地点に水を張ることで飛砂の継続を絶つ新たな飛砂抑制装置を考案した.本研究の目的は,考案した水面飛砂抑制装置の効果を風洞実験によって検証し,装置の最適なサイズを推定することである.

調査方法

幅0.2 m,深さ0.5 m,長さ7.3 mの風洞実験装置を用いて,風成砂(中央粒径:0.34 mm)を厚さ9 cmで敷き,上流端から2.70 m~7.25 m区間にかけて水400 ccを張った大・浅型トレー(大創産業,KI-18- p10 A-073,縦 22 cm,横15 cm,深さ4.5 cm)を20個並べ設置した.その際,トレーの上面が砂面高に一致するように注意した.なお,トレーと風洞壁との隙間は,発泡スチロールで埋め,砂面をなくした.周波数変換機(MITSUBISHI ELECTRIC製 ,FR-FS2-0.8K)によって36 Hz~56 Hzまで4 Hz毎に周波数を変えることで,送風機(マキタ製,MF302)を用いて6段階の風速条件で実験を行った.すべての実験は, 2 分間の通風とした.予備実験より求めた給砂量は,6.7 m/s(36 Hz):2.8 g/s,9.0 m/s(40 Hz):4.3 g/s,10.2 m/s(44 Hz):7.6 g/s,11.0 m/s(48 Hz):9.1 g/s,12.0 m/s(52 Hz):13.9 g/s,12.9 m/s(56 Hz):21.0 g/sとした.実験後,トレーに溜まった砂の乾燥重量と,風洞下流端に設置したブルーシートに排出された砂の重量を計った.また,トレー設置区間において,1.15 m間隔で砂面からの高さ10 cmに飛砂量計(UIZIN製,uiz5061)を5台設置し,5秒毎の飛砂カウント数の変化を調べた.

結果および考察

いずれの風速条件においてもトレーに捕捉された飛砂量は,下流方向に減少した.風速が遅い条件では,水面飛砂抑制装置の上流部で砂が多く捕捉され,装置の下流部にはほとんど砂が溜まっていなかった.風速が上がるにつれて装置全体に捕捉される飛砂量が増えた.給砂量に対する風洞下流端からの排砂量の割合は,6%以下に抑えられ,本実験条件内においては水面飛砂抑制装置に高い飛砂抑制効果があることが明らかになった.

水面飛砂抑制装置の直上流に設けた飛砂量計の飛砂カウント数に対して,そこから1.15 m,2.3 m,3.45 m,4.6 m下流地点における飛砂カウント数の割合を風速毎に求めた.仮に飛砂カウント数を5 %以下に落とす装置とするならば, 6.7 m/sでは2.9 m,9.0 m/sでは3.3 m,10.2 m/sでは4.2 m,11 m/sでは4.3 m,12 m/sでは5.9 m,12.9 m/sでは6.0 mの装置が必要であると推定された.

鳥取気象台湖山観測所の毎時平均風速のデータによると,2018年で最も風が強かった連続する3時間の平均風速は,約18 m/sであった.この風速の場合に必要とされる水面飛砂抑制水面装置の長さは,11.3 mであることが外挿された.

おわりに

Saltation粒子の運動特性を踏まえて考案された水面飛砂抑制装置の効果を風洞実験により検証した。その結果,風速12.9 m/s以下の実験条件内では,長さ4.55 mの水面飛砂抑制装置によって給砂量に対する排砂量の割合が6 %以内に削減され,効果的に飛砂を抑制することが確認された.鳥取砂丘において最も強い風の目安となる平均風速18 m/sに対して必要な本装置の長さは, 11.3 mであると推察された.現地に応用するために残され課題は,ひとつの荒天時の飛砂量に見合う本装置の容量を決め,イベント後の砂排出法まで加味した,また景観に配慮した水面飛砂抑制装置の設計を考えることである.