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[HGM04-04] 基盤岩を覆う風化生成物の性質が土層の形成および輸送の速度に及ぼす影響:花崗岩およびホルンフェルスの斜面を事例に
キーワード:土層の形成速度、土層の輸送係数、宇宙線生成核種、土質工学的性質
本研究では,花崗岩とホルンフェルスを基盤とする斜面が隣接する京都市東山にて,宇宙線生成核種10Beを用いて土層の形成速度と土砂の輸送係数を決定し,それらが基盤岩を覆う土層の性質にコントロールされていることを証明する.土層の形成速度は,いずれの斜面でも土の厚みに対して指数関数的な減少を示し,どの深度でも花崗岩斜面のほうが速い.この結果から,土層の輸送係数を経験的に求めると,それは花崗岩斜面のほうがわずかに大きい.花崗岩斜面は,透水性が大きいが保水性の小さな砂質土層に覆われている.深度1 m程度の地盤内は,気温の変化の影響を強く受ける.ホルンフェルス斜面は,シルトや粘土といった粘着質の土層に覆われており,その透水性は小さいが,保水性は大きい.花崗岩斜面と比べると,気温変化の影響は深部に伝わりにくい.花崗岩の地盤内は,水分量が少なく乾燥しやすく,比熱が小さいという特徴がある.これらの特徴は,降雨浸透に伴う乾燥・湿潤の程度だけでなく,地温の変化に伴う鉱物の膨張・収縮の程度も大きくするため,物理的風化を促進する要因となる.同時に,これらの作用は,ソイルクリープによる斜面下方への土砂移動を加速させる.透水性の大きな花崗岩斜面では,基盤岩の深度まで降雨が透過しやすく,水―岩石反応に伴う斜長石などの分解といった化学的風化作用も促進される.基盤岩を覆う土層の物性が,基盤岩の土層化の速度をコントロールする要因となることを,本研究は示した.同様の気候・テクトニクス環境下にこれらの地質の斜面が存在する場合,花崗岩斜面でより速く削剥が生じ,低起伏の丘陵地が形成されることが示唆される.