日本地球惑星科学連合2019年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR05] 第四紀:ヒトと環境系の時系列ダイナミクス

2019年5月26日(日) 10:45 〜 12:15 102 (1F)

コンビーナ:小荒井 衛(茨城大学理学部理学科地球環境科学コース)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、兵頭 政幸(神戸大学 内海域環境教育研究センター)、座長:池原 研(産総研)、青木 かおり

10:45 〜 11:00

[HQR05-01] 地震による海底の擾乱とイベント堆積物の形成:海底堆積物を用いた地震履歴の解明に適した場所はどこか?

★招待講演

*池原 研1 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門)

キーワード:タービダイト、地震履歴、表層堆積物再堆積

海底堆積物中のイベント堆積物,特に細粒タービダイトを用いた地震履歴の解読が世界中の様々な場所で試みられてきている.地震履歴の解読のために適した場所は,地震のたびごとに海底堆積物の再移動現象が発生し,再移動してきた粒子が毎回堆積する場所になる.また,例えば南海トラフ域のように百年規模の間隔で再移動現象を起こしうる巨大地震が発生するような場所では,繰り返し堆積するイベント堆積物の間にこれらを識別するに十分な通常時の堆積物が堆積する必要がある.地震時に海底斜面の崩壊(海底地すべり)が発生し,その末端相としてタービダイトが形成されることがあることが報告されており,また巨大地震の際に発生する海底ケーブルの破断事故も海底地すべりあるいはこれに派生した混濁流の流下の結果と考えられてきた.海溝陸側斜面には多数の海底地すべり様の地形が認められるが,発生する地震に対してその数は多いとは言えない.また,掘削コアや音響地質断面から推定される海底地すべりの発生間隔は地震の間隔に比べて有意に大きい.一方,いくつかの場所における細粒タービダイトの堆積間隔はその場所の地震の発生間隔あるいは津波堆積物の堆積間隔と調和的であることも知られている.このことは海底堆積物中に確認できる細粒タービダイトを堆積させる機構が海底地形規模の海底地すべりの発生とは別のものである可能性を示唆する.最近,表層堆積物の再移動が細粒タービダイトを形成する,という考えが出され,これを支持する測定・観測結果が提出されてきた.これに基づけば,巨大地震間に斜面域に細粒タービダイトを形成するに十分な堆積物が堆積し,それが地震のたびごとに再移動して堆積する場所が履歴研究に適した場所として選定できる.地震時の斜面堆積物の応答と再移動する堆積物の量と細粒タービダイトが堆積する場が重要であり,堆積速度の速い海盆が重要な研究ターゲットになる.