11:00 〜 11:15
[HQR05-02] 珪藻遺骸群集を指標とした巨大津波襲来時における気仙沼湾における急激な環境変動とその後の環境復旧過程の復元
キーワード:珪藻遺骸、1960チリ地震津波、2011年東北地方太平洋沖地震津波、気仙沼湾、海底地形
研究の目的
宮城県気仙沼湾は、東北地方太平洋沿岸に面している。その入り組んだ地形から、特異な潮流が生じており、これが湾内に浸食場および堆積場を規定している。気仙沼湾は、繰り返し津波災害を受けているが、1960年チリ津波、および2011年東北沖地震津波において、多くの死傷者を含む甚大な被害をこうむった。両津波においてその前後の海底地形を比較すると、津波に伴う潮流によって、最大で2mを越す、海底の洗掘と、津波土砂の堆積が確認された。そこで、この二つの津波に伴う海底下の津波堆積物を採取し、CTなどによる堆積構造の観察に加えて、堆積物中の珪藻遺骸を用いて、津波に伴う堆積過程の詳細な復元を試みた。これによって、周期的に繰り返される津波の押し波と引き波について、その流動過程の詳細な復元が可能となる。
珪藻は、珪酸質の殻をもつ単細胞の藻類であるが、その殻は堆積物中で保存されやすい。珪藻は環境指標として用いられることが多いが、泥~シルトサイズの物質の流動と堆積過程の復元の指標としても用いることが、本研究の特徴である。
研究で用いた試料
研究に用いた試料は、以下の通りである。
(1)湾内において2010年、2012年および2014年に採取された海底表層堆積物(27地点)
(2)1960年チリ津波に伴う津波堆積場におけるボーリング掘削試料(2009年掘削3地点)
(3)2011年東北沖津波に伴う津波堆積場におけるボーリング掘削試料(2013年掘削3地点)
このうち、海底表層堆積物は、2011年東北沖地震津波の前後における湾内の海況の変動を復元するだけではなく、湾内海底のボーリングコア試料中の堆積環境の復元のための基礎データとして用いた。
研究結果
(1)気仙沼湾では、湾内海底表層に分布する珪藻遺骸は、内湾域に生息して種のほかに、河川などによって陸域から流入してきたもの(淡水種)、外洋から潮流によって湾内に流入してきたもの(外洋種)、さらに赤潮などの湾内の海況汚染によって生じたもの(赤潮指標種)などが混在している。2011年東北沖津波により湾内には大量の陸源土砂が流入し、それに伴い淡水生の珪藻遺骸の割合が増加したこと、2012年と2014年では赤潮指標種が増加しており、2011年東北沖津波による湾内の海況汚染は3年を経ても解消されていなかったことがわかった。
(2)1960年チリ津波堆積物から、淡水生の珪藻遺骸と海水生の珪藻遺骸の割合が周期的に変動する過程が明らかとなった。1960年チリ津波においては、長周期(約1時間40分)の周期的な津波波の襲来が記録されており、それに伴う、津波の押し波(海域から湾内へ)と引き波(陸上から湾内へ)の堆積が見られている。
(3)2011年東北沖地震津波では、津波砂を伴う押し波堆積物の上位に、引き波に伴う淡水生珪藻遺骸を多く含む堆積物と、再度の押し波に伴う海水生珪藻遺骸を多く含む堆積物が周期的に堆積している。ここでは、津波初期からその後の津波波の挙動と、それに伴う湾内の堆積作用の変動が、詳細に復元することができた。
宮城県気仙沼湾は、東北地方太平洋沿岸に面している。その入り組んだ地形から、特異な潮流が生じており、これが湾内に浸食場および堆積場を規定している。気仙沼湾は、繰り返し津波災害を受けているが、1960年チリ津波、および2011年東北沖地震津波において、多くの死傷者を含む甚大な被害をこうむった。両津波においてその前後の海底地形を比較すると、津波に伴う潮流によって、最大で2mを越す、海底の洗掘と、津波土砂の堆積が確認された。そこで、この二つの津波に伴う海底下の津波堆積物を採取し、CTなどによる堆積構造の観察に加えて、堆積物中の珪藻遺骸を用いて、津波に伴う堆積過程の詳細な復元を試みた。これによって、周期的に繰り返される津波の押し波と引き波について、その流動過程の詳細な復元が可能となる。
珪藻は、珪酸質の殻をもつ単細胞の藻類であるが、その殻は堆積物中で保存されやすい。珪藻は環境指標として用いられることが多いが、泥~シルトサイズの物質の流動と堆積過程の復元の指標としても用いることが、本研究の特徴である。
研究で用いた試料
研究に用いた試料は、以下の通りである。
(1)湾内において2010年、2012年および2014年に採取された海底表層堆積物(27地点)
(2)1960年チリ津波に伴う津波堆積場におけるボーリング掘削試料(2009年掘削3地点)
(3)2011年東北沖津波に伴う津波堆積場におけるボーリング掘削試料(2013年掘削3地点)
このうち、海底表層堆積物は、2011年東北沖地震津波の前後における湾内の海況の変動を復元するだけではなく、湾内海底のボーリングコア試料中の堆積環境の復元のための基礎データとして用いた。
研究結果
(1)気仙沼湾では、湾内海底表層に分布する珪藻遺骸は、内湾域に生息して種のほかに、河川などによって陸域から流入してきたもの(淡水種)、外洋から潮流によって湾内に流入してきたもの(外洋種)、さらに赤潮などの湾内の海況汚染によって生じたもの(赤潮指標種)などが混在している。2011年東北沖津波により湾内には大量の陸源土砂が流入し、それに伴い淡水生の珪藻遺骸の割合が増加したこと、2012年と2014年では赤潮指標種が増加しており、2011年東北沖津波による湾内の海況汚染は3年を経ても解消されていなかったことがわかった。
(2)1960年チリ津波堆積物から、淡水生の珪藻遺骸と海水生の珪藻遺骸の割合が周期的に変動する過程が明らかとなった。1960年チリ津波においては、長周期(約1時間40分)の周期的な津波波の襲来が記録されており、それに伴う、津波の押し波(海域から湾内へ)と引き波(陸上から湾内へ)の堆積が見られている。
(3)2011年東北沖地震津波では、津波砂を伴う押し波堆積物の上位に、引き波に伴う淡水生珪藻遺骸を多く含む堆積物と、再度の押し波に伴う海水生珪藻遺骸を多く含む堆積物が周期的に堆積している。ここでは、津波初期からその後の津波波の挙動と、それに伴う湾内の堆積作用の変動が、詳細に復元することができた。